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朝日新聞社

オバマ大統領と天声人語 天声人語傑作選

初出:2008年8月30日〜2017年12月20日
WEB新書発売:2018年1月18日
朝日新聞

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 アフリカ系初のアメリカ大統領、バラク・オバマを、天声人語はどのように見守ったのでしょうか? 2008年の大統領選挙から、大統領就任、歴史的な広島訪問、そして退任後の動向まで、天声人語のオバマ関連コラムを集めました。

◇第1章 オバマ候補 米大統領選(2008年8月30日)
◇第2章 オバマと民主主義 米大統領選(2008年11月6日)
◇第3章 オバマ米大統領とモハメド・アリ氏(2009年1月22日)
◇第4章 オバマ大統領にノーベル平和賞(2009年10月10日)
◇第5章 オバマ大統領と「正しい戦争」(2009年12月12日)
◇第6章 オバマ大統領の執念(2010年3月24日)
◇第7章 オバマ大統領2期目へ(2012年11月8日)
◇第8章 オバマ氏と何を話すか(2014年4月23日)
◇第9章 オバマ氏の刺したくぎ(2014年4月26日)
◇第10章 オバマ大統領の敗北(2014年11月6日)
◇第11章 オバマ大統領が広島訪問(2016年5月28日)
◇第12章 オバマを思う年の暮れ(2017年12月20日)


第1章 オバマ候補 米大統領選(2008年8月30日)

 感激も演技もてんこ盛りの、いい笑顔だった。最初の黒人奴隷が北米に運ばれて4世紀、同じアフリカ系の血を引く政治家が、とうとう米国の頂に手をかけた。民主党が大統領候補に指名したオバマ氏。激しい予備選が技に磨きをかけたのだろう。受諾演説に、無用の高ぶりは見られなかった▼「変化はワシントンからは来ない。ワシントンに向けて起こる」「後戻りはできない。未来へ行進しよう」と全米に訴えた。45年前のワシントン大行進で、黒人解放の父、キング牧師が「私には夢がある」と語りかけた、まさに同じ日だった▼牧師は、暗殺される前年の遺著『黒人の進む道』(猿谷要訳)で、「確信と信頼に基づいて」「熱狂的声援をおくれる」黒人政治家を渇望した。そして「その人は白人の政治的な会議のなかでも……尊敬をもって扱われるであろう」と見通した▼オバマ氏は牧師が思い描いた「奴隷の子孫」ではない。父はケニアからの留学生、母は白人。ハーバード出のエリートでもある。「分類」の難しい来歴は、強みにも弱みにもなろう▼党大会の直前、氏の暗殺を企てたとして白人3人が捕まり、ライフルや弾が押収された。キング牧師の夢が現実に近づくほど、時代を逆に回す力も強まりかねない。米国史をかけた挑戦なのだと実感する▼あらゆる障壁、妨害を乗り越え、褐色の手で頂を引き寄せるのか。スタジアムを埋めた8万の歓喜に肌の色の別はない。人種の壁をめぐる長い長い絶望と夢の果て、「異色」を背負う47歳が、最後のコーナーを抜けた・・・

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