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経済・雇用
朝日新聞社

水族館を支える人々 八景島シーパラダイスルポ

初出:2016年10月17日〜12月19日
WEB新書発売:2018年1月25日
朝日新聞

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日本最大級の横浜・八景島シーパラダイスでは、約500種の海や川の生き物たちを見ることができます。私たちを楽しませてくれる空間は、どんな人たちによって支えられているのでしょうか。「水族館」のお仕事の現場にお邪魔し、そこで働く方々にお話をうかがってみました。

◇第1章 魚類担当/漁場通い、魚を調達
◇第2章 環境展示担当/えさに掃除に三つの「じ」
◇第3章 ショートレーナー/動物と心通わせて、本番へ
◇第4章 海獣担当/訓練、ショーだけじゃない
◇第5章 水処理担当/命守る裏方、24時間体制で水質保つ
◇第6章 獣医師/治療と繁殖、寄り添いながら
◇第7章 企画担当/アイデアは日常生活から
◇第8章 ふれあい担当/笑顔の裏で、安全守る神経戦


第1章 魚類担当/漁場通い、魚を調達

■信頼築き、貴重な「宝」譲り受け
 2016年7月末の午前4時。日の出前の千葉県館山市の坂田(ばんだ)漁港に、漁師たちが集まってきた。その輪の中に「横浜・八景島シーパラダイス(シーパラ)」のマークが付いた、つなぎの作業着姿の男性が交じっていた。魚の調達を担当する安部奏(そう)さん(44)。出港の準備を手伝う姿はまるで漁師だ。
 シーパラには魚を中心に約10万もの生き物が暮らしている。その7割ほどは、実は近海の漁師から譲り受けた魚たちだ。時間をかけて漁師と関係を築き、漁に同行し、水族館に必要な魚を譲ってもらう。
 船の上では、漁師の邪魔にならないよう位置取りを決める。定置網が半分ほど上がったところで、安部さんは自前の手網で欲しい魚をどんどんすくい始めた。水揚げよりも安部さんの作業が優先だ。「一生懸命がんばっていて、いいね」。7年の付き合いで、漁師たちから得た信頼は厚い。

 館山湾ではこの時期、定置網でアジやイカなどが捕れる。この日の水揚げ量は少ない方だったが、安部さんの収穫はまずまず。「漁獲が少ない方が、傷ついていない良い魚をもらえる」。ムツや深海魚のクロシビカマス、狙いのヒメコウイカなど700匹ほどを捕り、自分で運転してきたシーパラの活魚車(4トン積載)に積み込んだ。
 水族館で必要なのは主に小さい魚や珍しい魚。食べられないものや、市場で値がつかないものが多い。漁師が捨てていた魚たちが、水族館にとっては貴重な宝だ。小さい魚を狙うのは、大きいと持ち帰る際に傷がついて弱りやすいから。水槽で優雅に泳ぐ大型の魚も多くは水族館で成長した・・・

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