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経済・雇用
朝日新聞社

職業としてのホテリエ ソムリエは「ワインより客を覚えろ」

初出:2015年10月23日〜12月11日
WEB新書発売:2018年1月25日
朝日新聞

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 東京都心の名門ホテル「帝国ホテル東京」。取り扱うワインは約600種で、100万円を超えるものもある。だが、ソムリエの男性が先輩から言い聞かされたのは、こんな言葉だった。「100本のワインを覚えるより、100人のお客様を覚えろ」。ソムリエのほか、ロビーマネジャーやインスペクターなどホテルでのさまざまな職種を紹介する。

◇第1章 ロビーマネジャー/宿泊客、もてなす極意
◇第2章 インスペクター/客の目線で清掃チェック160項目
◇第3章 ランドリー/着心地も要望も、柔軟仕上げ
◇第4章 施設部/修理と管理に黒衣の誇り
◇第5章 ソムリエ/ワイン以上に、客を覚える
◇第6章 ゲストアテンダント/家族のように温かく気配り
◇第7章 ウエディングコーディネーター/気さくに振る舞い、耳傾ける
◇第8章 企画部/仲間巻き込み「再利用」に夢中


第1章 ロビーマネジャー/宿泊客、もてなす極意

 全国に1万軒近くあるというホテルの中でも最古級の歴史があり、2015年11月には開業125周年を迎えた帝国ホテル東京(東京都千代田区)におじゃまします。

 国内外の宿泊客らが絶えず行き交うメインロビー。一角でインカムのマイクを手に背筋を伸ばして立ち、さりげなく人の動きを観察している。
 フロントが手いっぱいで待っている人がいれば、歩み寄り、チェックインの手続きをする。荷物係が出払っていれば荷物を持ち、客室へ。おすすめのレストランを聞かれればその場で探し、地図も渡す。たらい回しにはしない。
 合言葉は「お客様を待たせない」。一人二役、ではおさまらない役回りをこなす「万能選手」だ。ロビーマネジャー制度ができたのは2006年。当時は都内に次々と外資系高級ホテルが開業していた。老舗高級ホテルとして、「おもてなし」で対抗しようと考えた。
 今いるのは8人。フロントや荷物係など、接客を一通り経験したベテランから選ばれた精鋭ぞろいだ。金井大輔さん(42)はマネジャーの発足メンバーだ。「待たせない」よりもさらに進んだ「お客様の先を行く案内」を心がけている。
 千人を超える常連客の顔と名前はもちろん、誕生日や出身地、趣味、タクシー会社の好みなども頭に入っている。「お客様のことは5回もお会いすれば自然と覚えます」。客が出口に向かえばドア係に連絡し、迎えの車が玄関前に着くように手配する。
 常連客の「こだわり」も頭に入れている。「チェックイン後は必ず靴磨きに行く」など、気づいたことは同僚とも共有する。常連客に関係のあるニュースを見つけたら、さりげなく伝えることもある。「沖縄、台風で大変でしたね」。客との距離が一気に縮まる瞬間だ・・・

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