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朝日新聞社

報告・パラダイス文書〔3〕 強者の楽園

初出:朝日新聞2017年12月17日〜25日
WEB新書発売:2018年2月1日
朝日新聞

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アフリカ大陸から東へ2000キロ離れたモーリシャス。タックスヘイブン(租税回避地)として名の知れたこの地もまた、「パラダイス文書」の暴露によって大きな注目を集めた。サトウキビ製造が主産業だった農業国が、国際的な金融センターへと発展する過程で、富裕層はこの地をどのように利用してきたのか。国民はそれをどう見ているのか。現地取材で追った。

◇第1章 サトウキビ畑、金融街に変貌
◇第2章 インドから、海渡った曽祖父
◇第3章 資源ない島、歩んだ金融立国
◇第4章 空のオフィス置き税率半減
◇第5章 他国の税収、吸い上げる力学
◇第6章 ブラックリストの指定逃れ
◇第7章 税規制阻止へ、ロビー活動
◇第8章 1%が操る「自国第一」


第1章 サトウキビ畑、金融街に変貌

 アフリカ大陸から東へ2千キロ。12月上旬、インド洋に浮かぶ小島モーリシャスには真夏の強い日差しが降り注いでいた。
 夕暮れ時、ハッサン・オリアールさん(58)は、首都ポートルイス郊外の自宅で記者を迎えてくれた。
 自営のサトウキビ農園は先月に刈り取りを終えたばかりだ。「かつては島のあちこちに、サトウキビ畑があったんだ」
 首都には今、別の顔がある。
 モーリシャス中央銀行、英大手銀行バークレイズ……。通り沿いのヤシの木の何倍もの高さのビルが立ち並ぶ金融街だ。中古の日本車とともに、ベンツやポルシェが行き交う。
 スーツ姿の男性は携帯電話で投資話を交わす。高級ホテルのバーでは、でっぷり太った半袖短パンの裕福そうな男性が、昼からけだるそうにビールをあおる。
 物価は日本並みだ。カフェでサンドイッチを頼めば195モーリシャスルピー(630円)。コカ・コーラを郊外で買うと35モーリシャスルピー(110円)。
 ビーチ沿いには、1泊10万円を下らないホテルが並ぶ。海沿いへ車を走らせれば、夕日の沈む入り江にセレブ向けの1億円近い別荘が販売されている。区画全体が壁で守られ、入り口に門番が立つ。

 首都近くのショッピングモールに場所を移し、オリアールさんの話に耳を傾ける。
 「多くの畑はコンクリートの下に埋まってしまった。金融街のビルの下だ・・・

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報告・パラダイス文書〔3〕 強者の楽園
216円(税込)

アフリカ大陸から東へ2000キロ離れたモーリシャス。タックスヘイブン(租税回避地)として名の知れたこの地もまた、「パラダイス文書」の暴露によって大きな注目を集めた。サトウキビ製造が主産業だった農業国が、国際的な金融センターへと発展する過程で、富裕層はこの地をどのように利用してきたのか。国民はそれをどう見ているのか。現地取材で追った。(2017年12月17日〜25日、8000字)

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