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経済・雇用
朝日新聞社

美術館職員というお仕事 東京国立近代美術館を支える人々

初出:2017年10月30日〜2018年1月29日
WEB新書発売:2018年2月22日
朝日新聞

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1952年開館で、日本で最も古い国立美術館である東京国立近代美術館。所蔵作品数は1万3000点、年間来場者は35万人を数え、そのうち約1割強は外国人です。「学芸員」「ガイドスタッフ」「修復職人」「看視スタッフ」など、巨大美術館を支える方々は、どんな思いで仕事をされているのでしょうか? 舞台裏を覗いてみました。

◇第1章 学芸員/価値あるアートに光を
◇第2章 看視スタッフ/鑑賞マナー、そっと見守る
◇第3章 絵画修復/画家の思いくむ「かかりつけ医」
◇第4章 教育普及/美術の楽しみ、子から大人まで
◇第5章 ガイドスタッフ/絵から感じる体験、引き出す
◇第6章 施設管理/作品の保管に最適な環境を
◇第7章 会場設営/展示の演出、手間惜しまず
◇第8章 展示企画/司令塔、見せ方も予算も周到に


第1章 学芸員/価値あるアートに光を

 日本で一番古い国立の美術館である東京国立近代美術館は所蔵品が多く、近年は外国人客にも人気です。美術館を出ると、さっきまでの景色が少し違って見える――。そんな体験にいざなってくれるのは、どんな人たちなのでしょうか。

■無名の作品も発掘・収集
 9月の夕方、東京国立近代美術館で開催中の「MOMAT(モマット)コレクション 東山魁夷特集」(11月5日まで)の会場に、美術課長の大谷省吾さん(47)がいた。手にするカルテの一枚一枚に、これまでに貸し出された美術館や日付、絵の傷み具合や傷んだ箇所などが作品ごとにびっしり書き込まれている。
 人気の作品は国内外の美術館の展示に貸し出されていることも多い。東山の作品を多く所有する同館も、17点の絵画のスケジュールをなんとかやりくりして、全点展示を実現した。
 将来にわたって残すべき作品を選び抜いて収集し、保管するのが大谷さんの仕事だ。「1万3千点の所蔵品のほとんどは頭に入っています」。限られた人しか出入りできない収蔵庫を出て、所蔵作品展に展示されるのはわずか200点。たくさんの作品が入れ替えを待っている。
 どうやって、購入作品を決めるのだろう。
 過去の展覧会の図録をめくり、作品が出展された当時の評価を古い雑誌や新聞記事で調べる。各地の展覧会を回って情報を集め、オークションの結果にも目を配る。画商との情報交換も欠かせない。最近の収穫は、尾竹竹坡(おたけちくは)という大正時代のユニークな日本画家の題名不詳の作品が発見され、その作品が初めて出品された展覧会と題名を突き止めて購入したこと。存在を忘れられた作品、どこにあるか分からない作品も守備範囲になる。値段が高ければ価値のある作品、というわけでもない。ここ数年は、海外から注目されるようになった戦後日本の前衛美術をめぐり、海外の画商たちも活発に動いている。
 「作品はみんなの財産。限られた予算で『これは』というものを見つけたい・・・

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