【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

社会・メディア
朝日新聞社

歌舞伎町の駆け込み寺 おじさんたちのラスト・リゾート

初出:2018年2月5日〜15日
WEB新書発売:2018年3月1日
朝日新聞

このエントリーをはてなブックマークに追加

 飲食店や風俗店がひしめく東京・新宿の歌舞伎町。一角に公益社団法人「日本駆け込み寺」がある。お金や薬物、暴力などあらゆる相談に乗っている。代表者は、韓国から密入国した父と在日韓国人の母の間に生まれ、幼いころは毎日のように虐待を受けていた男性だ。なぜ「駆け込み寺」をやっているのか。他人を助けることで自分を救っている――近くにいる者はそう見ている。密着してみた。

◇第1章 眠らない街で「一人を救う」
◇第2章 会社と憎悪、もうええわ…
◇第3章 餃子、「食」べて「交」わる
◇第4章 ネットVS1万人を見た目
◇第5章 資金繰り、自分を守る
◇第6章 「サングラスで得度」を生かす
◇第7章 「夫の友人」だって用意する
◇第8章 表と裏、「救う」と「守る」


第1章 眠らない街で「一人を救う」

 24時間眠らない街、東京・新宿は歌舞伎町。この街を手っ取り早く感じるには、日が暮れた後に耳を澄ませてみればいい。いろんな音があふれている。
 「居酒屋、飲み放題千円!」「そこのあなた! 客引きに勧誘されていませんか」「旅行のついでにアルバイト」「危険ドラッグゼロに向けて皆さんのモラルが問われています」……。
 呼び込みの声。繰り返す音声案内。中国語、英語、韓国語などの喧噪(けんそう)。歩行者を蹴散らすように響く高級車のクラクション。パトカーや救急車のサイレン。ゴジラの咆哮(ほうこう)。
 「旅行のついでに……」は、地方の風俗店で短期間働く女性の勧誘だ。ゴジラの「実物大」頭部を冠した街の新しいランドマーク、新宿東宝ビルに通じる「ゴジラロード」では1日4回、雄たけびと足音が響く。「ごった煮感」こそ、この街そのものだ。
 深夜でも文庫本が読めるほどギラつくネオン街を抜け、屈指の忙しさといわれる新宿署歌舞伎町交番を左に見ながら「職安通り」に向かう。やがて訪れる薄暗さとともに、独特の怪しさを放つファッションホテル街が現れる。
 公益社団法人「日本駆け込み寺」はその一角にある。
 ここは万策尽きて、頼るあてのない人たちが全国から訪れる年中無休の無料相談所だ。「たった一人のあなたを救う」を信条に、虐待やストーカー、借金、薬物中毒、引きこもりといった相談、出所者支援など、公的機関に行くに行けない人たちと向き合う。不夜城に根を張って16年近く。振り返れば5万件を超える相談に応じてきた。
 ある夜。異臭を放つ男性がやってきた。パチンコ依存で金が尽き、行くあてがないという。露出の多い服装の女性がきて、職務質問を受けた警官の態度が気に入らないとひとしきり息巻いた。電話が鳴った。50代という男性からで「おやじの遺産が底を突きそうだ。仕事をしたいが肉体労働は嫌だ」と話した。スタッフに何度も頭を下げる男性がいた。「働く所が決まりそうです」。元受刑者だという・・・

このページのトップに戻る