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救済に「税金垂れ流し」 東電、身内だけ守りたい

初出:2011年10月3日号
WEB新書発売:2011年10月7日
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救済に「税金垂れ流し」 東電、身内だけ守りたい


 東電救済の条件は、「徹底したリストラ」だったはずだ。決意を持って取り組めば、発送電分離や総括原価方式の見直しにも通じる。だが、その強い意志が民主党政権に見られない。

◇まるで官房機密費
◇有力子会社売却に難色
◇「身を切る」のはイヤ
◇15%の値上げを打診
◇総選挙まで塩漬け




 未曽有の原発災厄をもたらした東京電力を「救済」するにあたって、政府は一つの交換条件をつきつけた。菅政権時代の5月24日に設置が決まった「東京電力に関する経営・財務調査委員会」による実態調査に応じる、ということである。
 経営・財務調査委は、産業再生機構で社外取締役だった下河辺和彦弁護士が委員長に就き、発送電分離が持論の東大の松村敏弘教授、国鉄の分割民営化を進めたJR東海の葛西敬之会長らが加わる。彼らはデュー・デリジェンスと呼ばれる厳正な資産査定をおこない、東電の甘い経費を見直し、売れそうな余剰資産やリストラしうる余地を見つけだす任を得た。9月26日に開所式をする「原子力損害賠償支援機構」には、調査委のメンバーが横滑りし、同委のこれまでの査定を参考にして、東電への国費による支援を決める。そんな段取りである。

 経営・財務調査委は9月20日までに表向き8回の委員会を開いている。監査法人のトーマツ、経営コンサルタントのボストン・コンサルティング・グループ、そして西村あさひ法律事務所の3者を7月に雇い、会計士や弁護士ら約150人を東電に送り込んで帳簿や契約書を洗い出してきた。誇り高い東電にとって、土足で家にあがられ、懐に腕を突っ込まれるような屈辱だったろう。少なくとも応対した課長級社員は「資料を出せって厳しく言われましたよ」と忌々しそうに言った。

まるで官房機密費

 もたらされた情報は、調査委にとって驚嘆すべき内容だった。報告を知る有識者は、東電の経費をこう表現した。
「すごく変なところにいっぱい使っています。官房機密費の比じゃない。いろんなところに毒が回っている」
 ブラックジャーナリスト、反共の立場の出版社主宰者、有力政治家と親密な警備会社の経営者……。東電マネーの先にはそんな連中がいる。一昔前には日本中の総会屋が「株づけ」し、400〜500人もの特殊株主がいた会社である。与野党の有力政治家はこぞってパーティー券を買わせてきた。あらゆる魑魅魍魎が、東電のおこぼれにあずかっていた。
 かつての産業再生機構(現在は解散)には検事が出向し、手心を加えてほしいと圧力をかけてくる政治家に睨みを利かせた。その伝でいけば、新設された原子力損害賠償支援機構には、「公安から人をもらったほうがいい」、委員会には、そんな提案もなされている。

 競争相手がいない独占企業にもかかわらず、年間広告費は300億円も使っていた。人件費も高止まりし、OBへの年金も高水準である。それは、いくら使っても懐が痛まない電力会社の特異なコスト構造があるからだった。電気事業法上の許認可事業の電力会社は、すべてのコストを「適正原価」とし、保有する発電所など資産に一定の利率をかけたものを「事業報酬」(利益)とする「総括原価方式」で、電気料金が弾き出されている。これではいくらでも経費を使い、資産は多く持っていた方がいい。膨張圧力が加わる一方、非効率な経営慣行が温存されやすい。総括原価なので、発電や送電など工程ごとの収支管理はできていない。いわば、どんぶり勘定なのだ。
 デュー・デリジェンス結果を知る人物は、こう皮肉った。
「これでは東証の上場基準を満たしていない・・・

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