【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

社会・メディア
朝日新聞出版

卵子凍結、その先に何がある 煽られる独身女性の自衛本能

初出:2013年8月5日、9月9日号
WEB新書発売:2013年9月13日
AERA

このエントリーをはてなブックマークに追加

 結婚の予定がない健康な未婚女性にも、卵子凍結が認められる可能性が高まっている。背景にあるのは、女性の社会進出で生物学的な出産適齢期と、自分の産み時が合わなくなった時代の「ゆがみ」。だが、凍結≠妊娠、出産年齢問題、莫大な費用、そして「凍結しても、相手がいない」……と、現実はそれほど単純ではない。妊娠確率は年齢とともに確実に低下していくという現実を前に、女性たちの自分を守る新たな闘いが始まっている。

◇第1章 卵子老化前に独身で「卵活」 晩婚、非婚時代の出産願望
◇第2章 できることから始める「卵活」 とりあえず予定はないけれど… 
◇第3章 凍結だけでは産めない 独身女性の卵子凍結容認へ
◇[コラム]卵子凍結は予防医療、不妊の苦しみを減らしたい/生殖工学博士・桑山正成さんに聞く
◇[コラム]25〜35歳の生殖適齢期に自然妊娠が本来望ましい/慶大医学部・吉村泰典教授に聞く


第1章 卵子老化前に、独身で「卵活」 晩婚、非婚時代の出産願望


 すがるような思いで資料を取り寄せた。都内で広告関係の会社を起業した女性(28)は、この資料をお守りのように大事にしている。
 未婚者でもできる未受精卵の卵子凍結――。
「これさえできれば、20代の卵子を保存できるから、心おきなく仕事に打ち込めます」
 昨年、NHKスペシャルで「産みたいのに産めない〜卵子老化の衝撃〜」が放送されたあたりから、同世代の女友達の間で、
「テレビ見た?」
「35歳が壁だって」
 と、卵子老化や不妊についての話題がよく出るようになった。気になってネットや本で調べてみると、妊娠の確率は20代半ばから30代半ばにかけて緩やかに低下し、35歳を過ぎると一気に可能性が低くなる。40代ではなかなか妊娠、出産が難しいことがわかった。まだ20代なのに、すでに自分の妊娠力が低下し始めていることがショックだった。知り合いでも、20代半ばで結婚した女性はすぐに妊娠しているが、35歳以上の女性は妊娠しづらいと悩んでいる人も多い。



◎稼ぐ女性に若い卵
 結婚相談所と仕事をしたときに現実を聞かされたことも、焦りを助長した。相談所の関係者曰く、35歳以上の女性は、子どもができづらいという先入観をもたれるため、どんなにキレイでも男性からのオファーが減るという。たいしてキレイでなくても、20代の方が絶対人気がある、と言われたとき、その理不尽さに怒りがこみ上げた。
「必死に仕事をして、収入だって上げて、見た目もキレイにキープして、それでも男性からは対象外と見られるなんておかしい。男性がそう来るなら、女性だって『自衛』しないと」
 ネットを猛烈に検索して、見つけた自衛手段、それが「卵子凍結」だった。
 2007年に大手百貨店に入社した翌年に、リーマン・ショックのあおりで部署がなくなった。保険会社に転職したが、そこでも部署が縮小され、希望部署以外に配属された。好きな仕事をするために、貯金をはたいて当時の同僚3人で1年半前に起業した。
 起業後は仕事一辺倒。事業を軌道に乗せるため、深夜まで営業や残務処理に追われる毎日で、新入社員時代は月20回を数えた合コンも、今では半年に1回あるかないか。デートする暇もなく、ここ2年間は彼氏と呼べる人はいない。いずれ結婚して、子どもは2、3人ほしいが、見通しが立たない。将来後悔しないために今できることをやっておきたいのだという。
 ただ、卵子凍結にも不安があった。そこまでする前のめりな女は、男がひくのではないか。10人の男友達にリサーチした。
「35歳になったただの私と、20代の卵を持っている35歳の私、どっちがいい・・・

このページのトップに戻る