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朝日新聞出版

独身男子に「生涯未婚」危機 結婚の競争激化と条件高騰化の現実

初出:2013年12月23日号
WEB新書発売:2014年1月10日
AERA

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 学歴アリ、収入アリ、見た目も悪くない、それなのに結婚できないどころか、恋人すらできない。原因の一つは、女性に条件と愛情を求めすぎること。そんな独身男性を「飢餓男子」と呼ぶ。そもそも適齢期の20代は男子の数が女子の数を大幅に上回り、結婚に対する男女の意識のズレも甚だしい。迷える子羊が救われるためには、結婚の幻想から解き放たれるしかないのか。「いい人は、どこ?」。結婚・新自由主義の時代の乗り切り方が、ここにある。

◇第1章 「飢餓男子」婚難な時代
◇第2章 男と女はすれ違い
◇第3章 結婚・新自由主義の時代 激化する競争と条件の高騰化
◇第4章 理想の人と出会う方法 年齢、ルックス、会話力、学歴、職業別に出会い指南


第1章 「飢餓男子」婚難な時代

 「彼女もいないし、結婚できないからだめなんだよ」
 35歳、独身、恋人なしの記者は、何かとそう言われることが多い。旧帝大の大学院には行ったし(中退だけど)、正社員だ。年収も同世代の平均より高い。仕事もそこそこマジメにやっている自負もある。わずかながらも「モテた」時期も過去にはあったのに、結婚しないことで価値を下げられるのは本当に心外なのですが……。
 一見すると結婚相手として求められる条件は揃っている。でも、存在しないような好条件の女性からの愛情を渇望することから、現実の恋愛や結婚ができない。こんな男性を「飢餓男子」と呼びたい。
 「誰でもいいから結婚したら」
 東京都内で働く会社員のAさん(41)は、既婚者からそう言われることに辟易している。先のことを考えたら不安だが、必ずしも結婚はしなくてもいいと思っている。

◎男性より少ない女性
 結婚は必ずしも人生に必要ではない、と考える男性は増えている。本誌が実施した20〜40代の独身男性意識調査によると、「結婚したい」と答えたのは40・9%に過ぎなかった。また、晩婚化、未婚化のデータもある。
 男性の平均初婚年齢は、2007年に30歳を超える30・1歳を記録、11年には30・7歳まで上昇(次のグラフ)。50歳までに一度も結婚したことがない生涯未婚率も、男性の場合、00年は12・57%だったのが10年には20・14%にまでなった。実に5人に1人が「生涯未婚」となった。


 これらデータには、ある種の必然があると指摘するのは、『男性学の新展開』の著書がある武蔵大学助教の田中俊之さん(男性学)だ。
 「日本では20代の『適齢期』では女性より男性が1975年から多くなり、最近は20万人以上男性が多い。男性と女性がそれぞれ『誰でもよい』と考えたとしても同世代では相手を見つけることができないのですよ」
 じぇじぇじぇ! それなら記者に彼女がいなくて結婚もできなかったこともうなずける。
 未婚化、晩婚化の流れの中でも、独身男にとってつらい場面は度々訪れる。
 「楽しそうな夫婦や家族を見ると結婚したいと思います」
 そう話すのは愛知県に住み学習塾で働くBさん(49)だ。
 「食事も1人で食べるより大人数で食べた方が美味しいし、定年退職した後に夫婦で旅行も行きたいですし」

◎友人家族に「歯ぎしり」
 近年は楽しそうな夫婦や家族を目にする機会が増えてしまった。かつて、独身男性が楽しそうな家族写真を見て「歯ぎしり」するのは、正月に年賀状を受け取るときくらいだった。しかし、フェイスブックの普及に伴って正月でもないのに食事や遊園地での家族写真を「自分撮り」し、アップすることが常態化した。
 記者が今、フェイスブックを開けても、結婚して子どもをもうけた友人が、電飾に彩られた神戸の街で撮った家族写真がアップされていた。ちなみに、ずっと好きだった女性の結婚を知ったのもフェイスブックだった。
 独身男性は、将来の「孤独死」への恐れもある。都内にあるメーカーで新規開発に従事するCさん(45)は話す。
 「同居している父は74歳、母は69歳。このまま1人でいれば将来孤独死する可能性だってある。そういったニュースを見る度に身につまされます。親にも我々が死んだらどうするんだとも言われますし」
 ともあれ、フェイスブックは見なければいい。孤独死問題だって結婚したら解消する問題ではない。結婚したって離婚する可能性もあるし、夫か妻のどちらかが先立ち、一人が残されるケースは多いからだ。

◎陥る「フレンドロス」
 本当につらいのは友人の結婚式や結婚の知らせを受けたとき、とりわけ女性の友人が結婚するとの報を受けたときだとの声もある。都内の広告会社で働く会社員のDさん(29)はこう話す。
 「この前、女友だちの一人が結婚して富山に引っ越しました。もう2人で飲みに行くことはないと思うと寂しい。友人ということはお互いが好ましく思っていたわけで……。正直、10%くらい結婚する可能性はあるかと思ってた。それがゼロになったわけですから」
 女友だちが結婚して旦那という牢獄の囚われの身になり、2人で飲みにも行けなくなり疎遠になってしまうことがつらいという。
 記者にもこの種の経験はある。そして今、こう思う。「あのとき口説いておけばよかった」と。少なからぬ好意を抱いていた高校時代からの友人がいた。だが友人関係が壊れるのが怖く、一緒のベッドで夜を過ごしても何もないままだった。いつかは離ればなれになるのなら、思い切った行動に出てもよかったのに。その彼女は結婚した後、子どもももうけ大阪に住んでいると風の噂で聞いた。誰も、口説くのはいつ? 「今でしょ!」とは教えてくれなかった。
 男性全体の結婚難には、「適齢期」に男性より女性が少ないことに加え、経済問題がある。00年代に非正規雇用という労働形態が一般化、非正社員が全雇用者に占める割合は12年には35・2%に達し、平均年収も下がった。雇用者の平均年収は1997年の467万円をピークに11年には409万円になり、年収200万円未満の人も1千万人を超える(国税庁調べなど)。

◎お金が自由に使えない
 年収が200万円未満の場合、自身の生活だけで精一杯で、とても結婚どころではない。女性に興味がなく性欲も少ない「絶食系男子」も、この層にいるとされる。
 事実、アンケートでも概ね年収が低いと結婚への意欲は弱く、高くなるにつれ結婚したいという思いは強くなる傾向がある。「一度もセックスしたことがない」「3年以上ない」のも年収の低い層に多い(次のグラフ)。


 では、高年収層は生活を考慮せず悠々と結婚できる状況にあるのだろうか・・・

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