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朝日新聞出版

おひとり…「家族難民」の結末 最期まで本当に独りで生きますか

初出:2014年1月27日号
WEB新書発売:2014年1月31日
AERA

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 2030年、日本が迎えるのはケタ外れの「独り社会」。単身世帯は4割にのぼり、男性の3分の1、女性の4分の1は「生涯独身」だという。かつての「パラサイト・シングル」たちは、今や未婚のまま高齢化。親が亡くなり、職場を去れば、社会からの孤立は深刻化する。「結婚はしない、子どももいらない、友達はいるし、独りは気楽」。そんなアナタも、死後何週間もたって発見される最期を迎えるかもしれない。孤立死の覚悟がないなら、自立死を目指すべし。準備することは山ほどある。

◇第1章 「家族難民」の未来
 ・独白 支え合える誰かがいない、「一人」激増の時代が来る

◇第2章 孤立死しない自立死めざせ おひとりさまの終活


第1章 「家族難民」の未来 支え合える誰かがいない、「一人」激増の時代が来る

 2030年ごろ、日本はケタ外れに「一人」が多い社会になる。約4割が単身世帯になり、男性の3人に1人、女性の4人に1人は「生涯独身」だ。


 家族社会学者で中央大学教授の山田昌弘さんは今月出版する著書『「家族」難民』で、自分を必要とし大切にしてくれる家族という存在を持たない「家族難民」が激増すると警告する。
「独身でも友人や地域の人たちと親密な関係を築ける人はいる。ただ、介護や金銭面のサポートが必要な場合にも親身に援助してくれるのは、『家族』以外にはなかなかいない。日本の社会保障制度が家族を前提にしていて、シングル化する社会に対応していないのも大問題。このままでは家族を持たないことが、金銭的、心理的、社会的に孤立を生み、難民化につながる恐れは大きい」
 山田さんは15年前、自立せずに親と同居する若者たちを「パラサイト・シングル」と名付けた。当初、彼らが30代、40代になれば結婚して自立していくと考えていた。だが、当時20代だったパラサイト・シングルの多くは未婚のまま高齢化、12年時点で35〜44歳のパラサイト・シングルは305万人にのぼる。
「経済的に不安定で、独立も結婚もできない中年パラサイト・シングルが多く、家族難民予備軍だ。親を失う時期と老後を迎える時期が重なり、職場とのつながりも切れ孤立化の深刻度は深まる。比較的年金制度が充実している親世代がいることで問題が覆い隠されているが、20〜30年後には高齢で孤立する家族難民は300万人を超えるだろう。孤立死が増え、高齢者の犯罪が増えるなど社会や治安の問題につながる可能性もある」



◎一人の正月を代行家族と過ごす
 このような状況を「2030年問題」と呼ぶのは、『単身急増社会の衝撃』の著者で、みずほ情報総研主席研究員の藤森克彦さんだ。単身世帯を年代別に見ると、現状で多いのは20代の若年層だが、30年になると男性では50〜60代、女性では80歳以上がボリュームゾーンとなる。特に中高年単身男性が仕事を失うと、多くの時間をテレビなどに費やし孤立化しやすい傾向もある。07年の調査では、高齢単身世帯の貧困率は男性で約4割、女性で5割に達し、今後さらに貧困率が高まる可能性もある。
「日本はこれまでに経験したことのない社会を迎える。貧困層が拡大し、孤立化が進む中で、介護が必要となった人を社会でどう支えていくか。社会保障の強化や介護・福祉領域の人材育成など、社会全体として対応するために残された時間は多くない」(藤森さん)


 単身者が急増しているが、人は一人では生きられない。それを実感しているのは、都内で単身者に「レンタルフレンド」や「レンタル家族」を派遣するサービスを行う、女性スタッフだけの便利屋「クライアントパートナーズ」社長の安倍真紀さんだ。
 年末年始も休みなしで様々な依頼が舞い込んだ。「一人で年越しするのは寂しいので、一緒に鍋をつついて紅白を見てほしい」「初詣に一緒に行ってほしい」……。こんな依頼に、同社のスタッフが駆けつける。男性からの依頼には女性が2人で対応、部屋に2人きりにはならない仕組みで、基本料金は1時間約3千円〜。これに加え1回の依頼で出張費3千円がかかる。

◎溢れるツールが孤独を支える
 最近ではこんな依頼もあった。親と同居していた40代前半の独身男性から、最愛の母を看取る際、一人ではつらいので一緒に立ち会ってほしい。定年退職後の既婚男性からは、妻とはバラバラの生活なので、週1回は総菜を作りに来てタッパーに保存していってほしい。
「家族がいてもいなくても、本音で向き合い支え合える関係を持てない人が増えている。SNSでカッコイイ姿だけを発信してつながり合う友達はたくさんいるのに」(安倍さん)
 いつ自分が「難民」になるかもわからない。そんな現実を描いたのが、2月に公開される映画「東京難民」だ。些細なきっかけで貧困に陥り、家族も持てず、孤立する人たちが登場する。監督の佐々部清さんは言う。
「パソコンやネットカフェ、24時間営業のコンビニやファストフード店……今は一人でも貧困でもなんとかしのげるツールが溢れている。だからこそ、一度一人の気楽さに慣れると、面倒な人間関係を築いてまで家族を持ち、はい上がろうという意欲さえ失ってしまうようだ」
 佐々部監督は同郷で知り合いでもある安倍晋三首相にこの映画のDVDを送った。好きな人と家族を築く、そんなささやかな幸せを得ることさえ難しい人が急増している現状を知ってほしかったからだ。

◎家族神話を脱し他人と助け合う
 では、この現状にどう対応したらいいのか。前出の山田さんは、家族を持ちたいという思いがある独身者なら現実的な「婚活」の重要性を説く。
「年収600万円以上の男性しかイヤ、というような非現実的な条件を見直し、どういう人となら支え合って生きていけるかを真剣に考えるべきです」
 日本大学の久保田裕之准教授は、家族に過剰に頼らない人間関係の構築を訴える。大きなヒントとなるのがシェアハウスだという。高齢になってから突然施設で共同生活を始めるよりも、若いうちから血縁ではない他人と暮らす経験を積むことで、共同生活のスキルが向上するという。久保田さん自身も約10年間、シェアハウスの実践者だ。
「一緒に暮らすという経験の中から、たとえ他人であっても助け合える存在だと気づいていく。人の話を聞いたり、人に明るく接したりすることにも意識が向く。日本は家族神話がはびこり、人間関係が、どこまでも助け合うべき『家族』と、一切助け合えない『家族以外』に分断されている。子育ても介護も、万能装置であるかのように家族に負う部分が大きく、問題も生まれている。学生寮や社員寮などから始め、若いうちからもっと家族以外のつながりの中で暮らす訓練が必要だと思います」
 シェアハウスのマッチングをするNPOや事業者の支援、シェア用住宅の供給なども必要だと訴える。結果的に、今ほど「完璧」な家族を求めない傾向が生まれ、結婚のハードルも下がるかもしれない・・・

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