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医療・健康
朝日新聞出版

製薬業界、「四番」不在の苦悩 アベコベ政策で足元おぼつかず

初出:2014年10月27日号
WEB新書発売:2014年10月30日
AERA

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 どこかのプロ野球球団に似たのか、製薬業界が「四番打者」の後継者不足に悩んでいる。安価な後発医薬品(ジェネリック)がシェアを伸ばすなか、特許切れを迎えた主力薬に替わる大型新薬が生まれていないからだ。安倍政権に矛盾だらけの政策を押しつけられ、その苦悩は深まるばかりだ。一方、すでに国内でコンビニ店舗数を上回る5万6千店が乱立する薬局も「戦国時代」に突入。生き残りをかけた新手のスタイルが続々と登場し始めている。製造から販売まで、「クスリ」のいまを知る。

◇「四番打者」が生まれない
 製薬産業=成長分野の大いなる矛盾
◇生き残りかけ変わる薬局
 もう待っているだけではない


「四番打者」が生まれない
製薬産業=成長分野の大いなる矛盾

 トラフグ産地の遠州灘に面する静岡県。あるフグ料理店にはちょうど2年前から、ある「お得意様」の姿がぱたりと消えた。60代の男性店主はこう嘆く。
 「製薬関係者の接待がなくなりました。以前は一人1万5千円ぐらい飲み食いされていましたが、今は病院に2500円の弁当を届けるだけ。高級料理店はどこも死活問題ですよ」
 原因は、業界団体の医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(加盟約220社)が2012年から、1人5千円を超える接待を原則禁止にしたからだ。カラオケなどの2次会も御法度。これを機に全国各地で製薬企業による医師への接待攻勢が下火になった。
 さらに今年7月からは、前年度の接待費総額、講演の謝礼や原稿料の金額、支払った医師の名前などを公表する制度が日本製薬工業協会(製薬協、加盟約70社)のガイドラインにより始まった。すでに50社以上がホームページで情報を公開。これは法規制ではなく、業界の自主ルールに基づく情報公開であるため、甘さも指摘されているが、業界にとってはかつてない「スケルトン状態」だ。
 こうなった背景には、製薬企業と医師との『癒着』がある。製薬大手ノバルティスファーマによる論文不正事件を出すまでもなく、中立性を疑わせる医師への不適切な資金提供や接待が、たびたび問題となり、業界は信頼回復に乗り出したのだ。
 では、なぜ製薬企業は医師に不適切な便宜を図るのか。その答えの一つが、薬の特許切れだ。ノバルティスは、主力商品の高血圧治療薬「ディオバン」の特許切れに伴う売り上げの減少を補うため、類似薬の論文データを改竄したとみられている。
 特許切れは製薬企業にとっては死活問題。他社が安価な後発医薬品(ジェネリック)を発売するからだ。ただ、大手各社の主力薬は、2010年前後に相次いで特許切れを迎えたにもかかわらず、有効な手立てを打てずにいる。業績を引っ張る大型新薬が見つからないのだ・・・

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