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朝日新聞出版

フランス人は10着しか…本当? パリジェンヌの自宅拝見

初出:2015年6月15日号
WEB新書発売:2015年6月18日
AERA

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 「フランス人は10着しか服を持たない」という本が60万部売れている。限られた服を工夫して着回し、オシャレで洗練されたフランス人――。「もったいない」とため込みがちな日本人は、そんな暮らしに憧れる。しかし、本当に10着しか持たないのか? シンプルライフの根底にある哲学とは? パリジェンヌたちに自宅でインタビュー。出版不況の中でも売れ続ける「パリ本」15選も紹介する。

◇パリの女性は本当に10着しか持たない?/フランス人の生き方、暮らし方
◇仕事も育児も変幻自在に/フランスのキャリア女性たち
◇なぜ私たちは「パリ」なのか/パリ本だけが売れる


パリの女性は本当に10着しか持たない?/フランス人の生き方、暮らし方

 5月中旬。汗ばむくらいの陽気の東京を離れ、パリに降り立った。ひんやりとした風が頬をなでる。
 庶民的なエリアのパリ17区にあるアパルトマンに住むのが、フリーランスのPR、デザイン・プロジェクト・コーディネーターとして働くマリー・ド・コセット(33)。『フランス人は10着しか服を持たない』という本が日本で話題だという話を振ってみると、
 「えー、私はちょっと違うタイプかも……」
 と、大笑いしながら言った。
 マリーは昨年、この部屋を手に入れた。4年間貯金をして、親からもちょっとだけ援助を受けて。もっと若いころは、洗練されたサンジェルマン・デ・プレ地区、若者に人気のマレ地区に住んでいたが、30代になって居を構えたのは、商店街もある住み心地のよいエリアだ。
 年季の入ったスロットマシーンに、飛行機のミールカートを再利用したインテリア。用途不明なオブジェが並ぶ彼女の部屋は、確かに「モノが少ない」とは言い難い。クローゼットの中身も「10着」とはほど遠そう。
 「祖母の服も母の服も、良いと思う服はすべて取ってあるから結果的に多くなってしまった。でも、自分自身ではあまり買わない。ちゃんと歴史やストーリーがある服が好きなんです」



◎母が初任給で買った服
 「たとえば」と言って、彼女が取り出してきたのは、なんと母親が初任給で買ったというジャケット。
 「実際に着ているわけじゃないよね」
 と突っ込むと、
 「着ているに決まっているでしょ!」
 体形が似ているのか、サイズもぴったり。かつて母親が着ていたキャシャレルのワンピースなども保管してあるとか。
 「質が良いものは絶対に時代遅れにならないし、長持ちする。流行は20年サイクルで一巡するから、すべて取っておくと、毎年どれかしら流行に当てはまる。なかなか便利でしょ」
 服にしても、モノにしても、自分で買うのは、「良い出会いがあった」と感じたときだけ。最近、自分への誕生日プレゼントとしてあるリュックサックを購入したのは、店員と言葉を交わし、「この人たちから買いたい」と瞬間的に思ったから。
 特に旅に出たときの買い物が好きだ。身につける度に思い出がよみがえってくることに加え、オリジナリティーも高いからだ。
 「ほかの人と同じような格好だけはしたくない。そんなのは、つまらないから。ちょっとしたパーティーに出掛けて、まったく同じワンピースを着ている子を見かけるほどイヤなことはないからね」
 価値があると感じたものをとことん大切にする。それは、仕事でも恋愛でも同じだ。
 50人のクライアントと浅い付き合いをするより、5人としっかり向き合いたいから、仕事の依頼を潔く断ることだってある。愛情が薄れたのを感じつつ一緒に居てもしょうがないから、長年同棲していた恋人とも最近、あっさりと別れた。自分がどうしたいかがすべてだ。
 「あまり複雑に考えず、割とシンプルに生きているのかも・・・

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