医療・健康
朝日新聞出版

うつ服薬「8割は無意味」 薬に頼らない最新治療法

初出:AERA2015年7月6日号
WEB新書発売:2015年7月9日
AERA

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 うつはよくある病気で、薬を飲めば治る、という感覚はないだろうか? 「抗うつ薬で治るのは7〜8人のうち1人です」。獨協医科大学越谷病院こころの診療科の井原裕教授は語る。「風邪薬は症状を抑えるだけ。抗うつ剤も同じです。薬を飲むより十分に寝て、自己治癒力を高めることが先決」というのは薬剤師・宇田川久美子さん。いま、認知行動療法・磁気刺激療法など薬に頼らない治療法に注目が集まっている。

◇抗うつ薬に頼らない/「1千億円市場」で溺れない、悩める人への処方箋
 ・「足し算処方」避ける7カ条/薬を使わない薬剤師・宇多川久美子さんに聞く

◇20代女性はなぜ死を選んだのか/ルポ・SSRIと若者たちの自死

◇薬と併用できる最新療法/先端テクノロジーから東洋医学まで
 ・病気特有の脳の血流を近赤外光で「見える化」/保険適用になった「光トポグラフィー検査」

◇精神科の「名医」とどう巡り合うか/現役医師が教える「六つの誤解」


抗うつ薬に頼らない/「1千億円市場」で溺れない、悩める人への処方箋

 アベノミクスで株価は上がっても、仕事のストレスが原因でメンタルクリニックを訪れる人は減らない。
 昔に比べ受診しやすくなり、服薬への抵抗感も薄れたが、向精神薬の副作用や依存症のリスクを、患者はどこまで知っているのだろうか。



 「よくある副作用ですね。そのうち楽になるから」
 精神科医のそっけない言葉に、不信感が芽生えた。広告会社に勤めるA子さん(30)が、抗うつ薬「パキシル」の服薬をやめたいと告げた時のことだ。
 2013年2月、A子さんは仕事のミスがきっかけで、うつ状態に陥った。取引先に叱責され、信頼を取り戻そうと必死になるほど、ミスが重なる。黙っていても涙が流れ、本や新聞を読もうにも活字が頭に入らない。やがて吐き気や頭痛に襲われ、朝も起きられなくなった。
 近所の精神科クリニックを受診し、うつ診断のテストを受けた。「自分は他の人に迷惑をかけているか」「人生が空っぽに感じるか」などの問いにイエスが多くて泣けてきた。自律神経失調症と診断され、パキシルのほか抗不安薬と自律神経調整薬の計3剤を処方された。
 抗うつ薬は、化学構造の違いから「三環系」「四環系」「SSRI」「SNRI」などに分類される。パキシルはSSRI、つまり「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の一種だ(図)。セロトニンは安らぎや幸福感を与える脳内伝達物質で、うつ病の患者はこれが機能不全の状態だといわれる。


 薬剤師の宇多川久美子氏によると、
 「パキシルは、うつの症状を抑える薬ですが、重大な副作用として逆に『うつ症状』が表れることもあります。添付文書では、若年者の自殺リスクを高めると警告しています」
 アメリカやイギリスでも、未成年者へのSSRIの投与は慎重に行うよう勧告している。

◎8割の患者に無意味
 A子さんは、薬を飲み始めてすぐに気分が明るくなったような気がした。しかし、数日後には吐き気、目まい、頭痛などの副作用に襲われた。電車に乗っていられず、途中下車してトイレに駆け込む日々。常にイライラし、攻撃性が増す気がした。
 「仲のいい友人が男性からセクハラのように触れられた時、力いっぱい男性の腕をねじり上げてしまって」
 1カ月がたち、パキシルを一日1錠から2錠に増量すると、副作用も抑うつ的な気分も悪化した。医師に相談したところ投げかけられたのが、冒頭の言葉だったのだ・・・

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この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

うつ服薬「8割は無意味」 薬に頼らない最新治療法
216円(税込)
  • 著者AERA編集部・竹下郁子/ライター・越膳綾子、越膳綾子、熊谷わこ、ノンフィクション作家・山岡淳一郎
  • 出版社朝日新聞出版
  • 出版媒体AERA

うつはよくある病気で、薬を飲めば治る、という感覚はないだろうか? 「抗うつ薬で治るのは7〜8人のうち1人です」。獨協医科大学越谷病院こころの診療科の井原裕教授は語る。「風邪薬は症状を抑えるだけ。抗うつ剤も同じです。薬を飲むより十分に寝て、自己治癒力を高めることが先決」というのは薬剤師・宇田川久美子さん。いま、認知行動療法・磁気刺激療法など薬に頼らない治療法に注目が集まっている。[掲載]AERA(2015年7月6日号、18700字)

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