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朝日新聞出版

私は母を殺しそうになった 認知症介護、心がぽきっと折れて

初出:2015年11月2日号
WEB新書発売:2015年11月12日
AERA

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 良妻賢母で有能だった母が、認知症になってから喜怒哀楽を隠さず泣くわ、笑うわ、怒るわ。映画監督の関口祐加さんは「ああ、やっと人として解放されたんだ、猫をかぶっていた母の人生が終わったんだと思っています」。「私はつい先日、母を殺しそうになってしまった」と話すのはワーク&ケアバランス研究所の和気美枝さん。「介護の仕事をして、さんざんいろんなことを人に言ってきたのに」。働きながらの介護で心がぽきっと折れた。薬を無理やり飲ませようと口にペットボトルやキウイを押し込んだという。認知症になった家族の介護は、どうしたらいいのか。経験豊かなプロ3人が語り合う。

◇介護の専門家が語る「家族の認知症」
◇奇行の裏に家族の不安
◇一番つらいのは本人
◇やめるなら介護の方
◇口うるさい家族を宝に


介護の専門家が語る「家族の認知症」

 ――認知症になった親族を介護した経験がおありだそうですね。

 (和気美枝さん) 私はつい先日、うつ病とアルツハイマー型認知症を持つ母を殺しそうになってしまったんです。働きながら介護をしていて、心がぽきっと折れたんです。介護の仕事をしているから、さんざんいろんなことを人に言っているのに。



 (関口祐加さん) 突然そういう衝動にかられたのですか?



 (和気) アルツハイマー型認知症になる前の64歳のときから反復性大うつ病を持つ母なんですが、薬を飲まなくなったので母の頭を押さえて無理やり、口にペットボトルと薬と、そばにあったキウイを押し込んだんです。その瞬間、これは本当にヤバいと思って、自分の部屋に閉じこもりました。母が入れないように荷物でドアを塞いで。そこで、訪問看護師さんに相談して、まずは自分のためにも、母を病院に入院させました。

奇行の裏に家族の不安

 (関口) 原因は何だったんですか?

 (和気) 入院させた方がいいのは分かっていたんですが、させたくないという勝手な私の要望があって。認知症が進むんじゃないかとか、お金がかかるんじゃないかとか、不安だったんです。

 (関口) その不安をお母さんが感じちゃったのでしょうか。介護される側はとっても繊細で、介護者の表情を敏感に読み取るんですよね。母は、私がちょっと仕事で外泊すると泣くんです。もう帰ってこないかと思ったって。でもそこで、私も一緒に泣いたら駄目だと思う。家族だとどうしても血がつながっている分、親の介護にのめり込んでしまいがちです。
 認知症になる前は、良妻賢母で有能な母でした。でも認知症になってからは喜怒哀楽を隠さず泣くわ、笑うわ、怒るわ、家にも2年半引きこもりましたよ。私の妹は、あんなに能力が高かった母が認知症になって、どんどん壊れていっていると言うんです。でも私は、ああやっと人として解放されたんだ。猫をかぶっていた母の人生が終わったんだと思っています・・・

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