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経済・雇用
朝日新聞出版

3年ルールは「死刑宣告」 派遣社員3割が中高年

初出:2016年2月15日号
WEB新書発売:2016年2月25日
AERA

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 倒産やリストラ、親の介護などで中高年の失業者が急増し、派遣市場に流れ込んでいる。総務省調査によると、45〜64歳の派遣社員は2014年平均で34万人。04年の2・4倍で、派遣全体の約3割を占める。だが、その現実は厳しい。40歳を過ぎると仕事は極端に減り、職種はキャリアを問わない単純労働ばかりに。法改正ですべての派遣社員が同じ職場で働ける上限が3年になったことで、失業して無職になるリスクが高まっている。求人の少ない中高年にとっては「死刑宣告」にも等しいのだ。中高年の派遣現場をルポする。

◇中高年派遣34万人の悲鳴/法改正を逆手にとった「派遣切り」も


中高年派遣34万人の悲鳴/法改正を逆手にとった「派遣切り」も

 「じゃあ、いつ辞める? 今月? 来月?」
 関東地方の派遣社員の50代男性Aさんは昨年9月、職を失った。その約1カ月前、派遣先のリーダーの男性社員(40)に事務所内のロッカールームに呼び出されて叱責された後、別の社員から突然そう切り出され、契約を切られたのだ。
 都内の有名私立大学を卒業後、正社員として流通関係の企業や学習塾で働いた。だが、40歳を前に勤めていた塾が廃業。必死に仕事を探したが、中高年に正社員のイスはなく、生活のため派遣会社に登録した。しかし、紹介されるのは警備、引っ越し、倉庫作業といった「3K」と称される仕事ばかり。15社近い派遣会社に登録し、倉庫を中心に働いてきた。

◎パワハラを告発したら
 昨年3月から派遣されたのは、神奈川県内にある倉庫。医療品の「ピッキング」と呼ばれる作業だった。小学校の体育館くらいの広さの倉庫で、棚から商品を取り出し、箱に入れ、梱包し、配送の準備をした。倉庫では14〜15人が働いていたが、リーダーを除いて全員が中高年の派遣社員だった。
 Aさんの時給は、県の最低賃金ぎりぎりの900円。毎月の手取りは15万円にも満たず、交通費も支給されない。それでも、朝から夕方までまじめに一生懸命働いた。それが突然、契約終了を告げられたのだ。
 思い当たる節はあった。リーダーの社員は自分が気に入った派遣社員ばかりをひいきし、気に入らない派遣社員には仕事量などで露骨に差別した。たとえば、商品情報を読み取るスキャナーを気に入った派遣社員にだけ使わせたり、逆に気に入らない派遣社員の仕事を減らしてやる気をそいだり。少しでもミスをすれば「お前、飛ばすぞ」と怒鳴られた。そうしたパワハラに我慢できず、Aさんは会社の役員に訴えたのだ。
 ロッカールームに呼び出されたのは、その日の夕方だった。リーダーは、「不満があるなら直接自分に言え」と言った後、別の社員と相談するよう告げた。すると、いきなり冒頭の通告――。
 この社員は保身から、面倒な問題を背負いたくなかったようだ。後日、Aさんは派遣会社の営業マンに「どうにかならないですか」と頼んだが、翌月いっぱいで一方的に契約を打ち切られた。のちに理由は、役員に告げ口をしたことだと聞かされた・・・

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