100日裁判の終幕はあっけないものだった。首都圏で男性3人の連続不審死にかかわったとして、殺人や詐欺などの罪で起訴された木嶋佳苗被告(37)に対し、さいたま地裁(大熊一之裁判長)は4月13日、起訴された10件すべてを有罪と認定し、求刑どおり死刑判決を言い渡した。この裁判で裁かれたのはいったい何だったのだろう。
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4月13日の金曜日、佳苗の100日裁判は最終日を迎えた。傍聴券を求めて約1300人が並び、さいたま地裁の前にはテレビ局の中継車が溢れた。ものものしい雰囲気の中、桜の花びらが空を舞っていた。
1カ月ぶりに見た佳苗は、髪が伸び、心なしかぽっちゃりとしていた。珍しく肌が荒れ髪もぱさついている。揃えられていた眉も、黒々と伸びて存在感があった。最後の服装は、青い襟のあるシャツに、黒いカーディガン、グレーのフェンディのミニスカートだ。
開廷直後、裁判長に向かい合うようにして座った佳苗に、裁判長は言った。
「判決理由から言います」
そのとたん、記者たちがバッ! と一斉に出て行った。死刑判決だと、ほぼ分かったからだ。死刑の場合、被告人の精神的負担を避けるために、主文を後回しにすることになっている。そういう慣習を佳苗が知っているか知らないか、背中からは動揺は窺(うかが)えない。
裁判長は次々に判決理由を読み上げていった。それは検察の主張にぴったりと寄り添うような内容だった。寺田隆夫さん(当時53)を殺害、安藤建三さん(当時80)を殺害、大出嘉之さん(当時41)を殺害。3件の殺人を認めた。
佳苗は机の下でゆったり足を交差させ、ゆらゆらさせている。いつもの癖だ。表情も変わらないのだろう。
判決を聞きながら、首を傾げたくなる場面がなかったと言えば、嘘になる。例えば東京都青梅市の自宅で亡くなった寺田さん宅の合鍵についての認定だ。
寺田さんの家には鍵がかけられていた。鍵をかけたのは寺田さんか、それとも合鍵を持つ第三者か。
検察側は、二つあるはずの鍵が寺田さんの部屋に一つしか残っていなかったのは、佳苗が持っていたからだ、と主張していた。が、その証拠はない。そもそも鍵が部屋に二つあった証拠も、鍵が一つなくなっている証拠もないのだ。
しかし裁判長は言った。
「寺田さんはレシートをきちんと残しておく几帳面な人だった。鍵をなくすことは、考えられない」
え? そんな理由でいいの? 思わず耳を疑い、身を乗り出してしまう。
寺田さんの事件は決定的な証拠がなく、検察側が一番苦心した印象を受けていた。証人として練炭コンロ業者らを6人も呼び、寺田さんの声が吹き込まれていた留守番電話のメッセージまで法廷で流した。留守電など寺田さんは生きていた、ってだけの証拠である。時に主任検事は、泣いた。なりふり構わないパフォーマンスは、そこまでしなくてはいけないほど、決定的な証拠がないことを浮かび上がらせたと思っていた・・・
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首都圏で男性3人の連続不審死にかかわったとして、殺人や詐欺などの罪で起訴された木嶋佳苗被告に対し、さいたま地裁は死刑判決を言い渡した。この裁判で裁かれたのはいったい何だったのだろう。特集「北原みのりの100日裁判傍聴記」スペシャル版+最後に佳苗被告と同居した男性が激白「佳苗のベッドと警察のずさん捜査」も同時収録。[掲載]週刊朝日(2012年4月27日号、9900字)
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