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科学・環境
朝日新聞出版

すばるが迫る! 暗黒エネルギーと暗黒物質の「正体」

初出:2012年5月4日―11日号、18日号
WEB新書発売:2012年5月18日
週刊朝日

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 日本のすばる望遠鏡が今夏から新たな観測を始める。狙うのは見えない物質「暗黒物質」と、見えないエネルギー「暗黒エネルギー」だ。両方で宇宙の96%を占めているにもかかわらず、正体は全く不明。解明できれば、アインシュタインを超える新たな宇宙原理が分かるという。SFも真っ青な驚異の宇宙像に迫る。

◇すばるが迫る 暗黒エネルギーと暗黒物質の「正体」
◇宇宙は10次元ある!?


すばるが迫る 暗黒エネルギーと暗黒物質の「正体」

 常夏の国ハワイ。
 その中で最大の島、ハワイ島の中北部に位置するのがマウナケア山だ。標高4205メートルは富士山の1・1倍で、ハワイでは珍しく雪に覆われることも多い。山頂付近では酸素が薄く頭がぼーっとする。
 そんな空と雪だけの世界を、世界各国の13の観測所が取り囲んでいた。空に近くて都会の明かりに邪魔されないこの山頂は、天体観測の聖地なのである。その中でひときわ大きく角ばっているのが、日本のすばる望遠鏡だ。



 「銀色のドームが空を映して、薄い青に見えるでしょう」
 案内してくれた国立天文台の宮崎聡(さとし)准教授(46)が笑った。1999年に観測を開始して以来、ここにずっと通い詰めてきた。誰よりもすばるを知る研究者の一人だ。
 そしてこの夏、すばるは生まれ変わる。宮崎さんたちが10年かけて開発してきた新型カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム」が設置されるからだ。
 新型カメラが狙うのはずばり、「見えない物質」と「見えないエネルギー」。それぞれ「暗黒物質」、「暗黒エネルギー」と呼ばれる。
 「暗黒」とは黒いという意味ではない。光を全く出さないことから、「正体不明」で「手も足も出ない」という意味。今、世界中の科学者が血眼になってその正体に迫ろうとしている宇宙最大の謎だ。
 しかし、これまでそんなものがあるなんて聞いたことがなかった。そもそも宇宙は広い。正体不明のものが一つや二つあってもおかしくないではないか。

◎宇宙の96%が未知の物質とエネルギー
 「ところが、この未知の物質とエネルギーが全宇宙の96%を占めていることが最近分かったのです。私たちが知っている物質は逆に、たった4%しかありませんでした」


 こう話すのは村山斉(ひとし)さん(48)。今回の観測で解析を分担する東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の機構長だ。素粒子物理学の世界的権威で、カリフォルニア大学バークレー校教授でありながら機構長も務める。その気さくで親しみやすい人柄もあって、著作はベストセラーとなり、テレビの出演依頼も多い。
 とはいえ、宇宙の大半が謎だらけというのは穏やかではない。
 「一体、この大量の謎の物質とエネルギーは宇宙で何をしているのか、気になりますよね。そこで、昨年のノーベル物理学賞がどんな功績に与えられたか、覚えていらっしゃいますか」
 確か、宇宙の膨張が加速したことを見つけた米国とオーストラリアの研究者たちに贈られたはず……。
 「そうです。これまでの宇宙物理学によれば、宇宙はビッグバンという巨大爆発によって生まれたとされてきました。これが正しければ・・・

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