13人の死者と6千人以上の負傷者を出したオウム真理教による地下鉄サリン事件から、17年あまり。大胆にも首都圏で暮らしていた菊地直子容疑者(40)が逮捕され、最後の一人、高橋克也容疑者(54)もあぶり出された。あなたもすれ違っていたかもしれない2人の『潜伏生活』から浮かび上がるものとは――。
◇高橋克也、「隠遁生活」と「最終攻防」
◇菊地直子、男にハマった「信仰」と「逃亡生活」
◇完全詳報・オウム事件のすべて
男が身を隠すために10年以上にわたって潜んでいたのは、人里離れた田舎町でもなく、人波に埋もれる大都会でもなく、慣れ親しんだ横浜市内の実家からさほど離れていない、川崎市内のアパートだった。
街には、飲み屋があり、外国人パブがあり、競輪・競馬場があり、風俗街があり、そして働き口がある。
「全国のワケありの人が流れ込んでくるのよね。身を隠すのにいいからじゃないかしら。私たちは、こういうことがあっても驚かないし、日ごろから受け流しているから。慣れっこなのよ」(地元スナックのママ)
男はこの混沌が広がる街で、建設作業員として働き、息を潜めて生活していた。
見た目は『職人風』で、仕事ぶりはまじめ。おとなしくてマンガ好き――川崎駅近くの繁華街にある洋食屋チェーン店員が語る。
「店に入る時は、人さし指を1本立てて『一人』。帰る時も『ごっそうさん』ってちょっと偉そうな言い方で、独特だったから覚えていた。月に数回来る常連で、いつも一人で本を読んでいた。今回の報道で写真を見て『あっ!』と思った」
どこにでもいそうなこの『常連客』こそ、日本中を震撼させたオウム真理教(現・アレフ)による「地下鉄サリン事件」の最後の特別手配犯、高橋克也容疑者だった。
逃走劇が始まったのは、同じく特別手配犯だった菊地直子容疑者の逮捕から一夜明けた6月4日朝。勤めていた建設会社の夜勤明けで川崎市内の社員寮に帰る途中、同僚に、
「菊地直子が捕まったらしいよ」
と話しかけられた瞬間だった・・・