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となりの「天上人」 超高級マンション最上階の意外な所有者

初出:2013年4月26日号
WEB新書発売:2013年4月26日
週刊朝日

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 アベノミクスによって不動産価格は上がり始め、そのうえ消費増税も迫り、マンションの購入を考える人も多くなっただろう。そこで、ふと、見上げてみると……「雲の上の世界」は、いったいどんな人が買っているのか、気にならないだろうか。これまであまり知られていない、高級マンションの最上階の所有者を徹底調査みると、そこから見えてきたのは、いまどきの「ミリオネア」「ビリオネア」たちの意外すぎるナマの生態だった。

◇第1章 東京を買うのは誰だ? 
◇第2章 「ビリオネア」たちの意外に質素な私生活


第1章 東京を買うのは誰だ? 


 東京都心に建つ超高級マンションの売り出しに際して、富裕層を対象に説明会が開かれた。
 来場者のひとり、ある60代の男性は、実に地味だった。黒いロングコートには穴が開いて、中の綿がはみ出していた。乗ってきたのはレンタカーだった。
 会が終わると、この男性が説明役の講師のもとに歩み寄り、物件の詳細について矢継ぎ早に質問した。
 そして最後に、
 「最上階を買いたい」
 と、希望を明かしたのだ。
 詳しくは後述するが、資産家らしからぬ意外な身なりだ。講師が驚いていると、この物件を販売する会社の社員が耳打ちした。
 「この人、わが社の物件をすでに三つ持っているんですよ」
 なぜ、いかにもお金がなさそうな格好をしていたのか。この講師によれば一般的に、不動産会社に自分の資産状況などを知られ、しつこく営業攻勢をかけられるのを非常に嫌がるからだという。
 もっとも、販売会社も、こうした富裕層の考え方は先刻承知だ。
 「キツネとタヌキの化かし合いですね」(この講師)
 どうやら高級マンションをめぐっては、われわれの知らない世界が繰り広げられているようだ。

◎所有者の8割が日本の個人と企業
 高級マンションを買えるほどの資産を持つ富裕層は限られている。
 そのうえ、売りに出される数も非常に少ない。不動産協会によれば、今年1〜2月に供給された2884戸のうち、1億円以上の物件は1・3%にすぎない(左のグラフ〈1〉)。そのなかで最上階となると、数は極めて少ない。


 いったい、所有権はどうなっているのだろうか。
 都内の一等地に建つ高級マンションの「最上階」について、不動産登記をもとに徹底調査した。
 対象は91棟、334戸だ。それを二つに分けた。ひとつは、近年建設された売買価格の高い「高級マンション」で30棟、137戸(一覧表)ある。


 もうひとつは、20〜30年ほど前のバブル期に建設された高級な物件で、価格が比較的下がりにくい「ビンテージマンション」だ。こちらは61棟、197戸ある。これによって、バブル期からの変化も浮き彫りになる。
 まず、「最上階」の所有者の属性からみてみよう(上のグラフ〈2〉)。高級マンションでは、日本の個人と企業が合わせて8割以上に達する・・・

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