世相・風俗
朝日新聞出版

女性は「肌寄せ、唇重ねるだけで幸せ」 高齢者の本当の性愛、千人調査

初出:週刊朝日2013年7月26日号
WEB新書発売:2013年7月26日
週刊朝日

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 夫と死別後、66歳で「恋人」と一夜をともにした女性は、唇を重ね、肌を寄せ合うだけで幸せだったと振り返る。50歳以上の男女千人へのアンケートでも、女性では「恋をしている相手」とセックスをしたいと思わない人が半数近かった。3人の女性の恋愛体験記とともに高齢者の「本当の性愛」の姿に迫る。

◇第1章 同じ布団で唇重ねるだけで幸せ
◇第2章 心寄せられる男性との付き合い「夫はすべて承知」
◇第3章 56年、既婚者を想う 「元気な姿が私の支え」
◇[アンケート]50歳以上の男女1000人対象の恋愛アンケート


第1章 同じ布団で唇重ねるだけで幸せ

(夫と死別・74歳)

 真冬の蔵王。地吹雪の夜、ホテルの和室に布団が2組、敷かれていた。二人の男女は、ごく自然に同じ床へ。すると、男性が少しおどけて切り出した。
 「2年も待たされてるうちに僕は古希を迎え、すっかりダメになっちゃったよ」
 女性はわざと口をとがらせて言った。
 「まあ、ひどいわ。それは私のせい?」
 次の瞬間、二人の笑い声がはじけた。そのままそっと唇を重ね、肌を寄せ合う。互いのぬくもりを十分に味わった後、それぞれの布団に戻り、眠った。
 「こんなに幸せで、それ以上は必要ないと。だから私たちの間に、体の関係は一度もありませんでした」
 関東地方に住む美雪さん(74歳、仮名)は、今は亡き恋人と初めて旅行した8年前を振り返り、目を細めた。二人が出会ったのは10年前、谷川岳へのバスツアーだった。美雪さんが仲間とレストランで夕食を囲んでいると、別の席で一人食事する和雄さん(仮名)が目に入った。どこかさみしげで、つい「よかったらご一緒に」と声をかけた。
 和雄さんは、谷川岳はすでに他界した妻の愛した場所だった、と明かした。美雪さんも夫の三周忌を済ませた直後だった。ツアーの別れ際、「写真を送りたい」という和雄さんに、住所を教えた。
 その後、和雄さんから手紙が頻繁に届き始めた。
 《今度、梅を見に行きませんか?》《亡き人への追憶は追憶として、前向きに生きていきましょう》
 あなたの美しさが忘れられないとつづられ、交際を申し込まれた。達筆の文面ににじむ優しさと誠実さに、どんどん惹かれていく。食事やコンサートに出かけるようになって、2年が経つころ、「樹氷を見に蔵王へ」と誘われた。
 美雪さんは100歳近い義母と二人で暮らす。それが、和雄さんを受け入れられない最大の理由だった。でも、介護だけの日々は苦しい。この恋をあきらめたら、いつか義母を恨んでしまう。「私は意地悪な嫁になりたくない」。美雪さんは交際に踏み切った。
 和雄さんは退職を機に、美雪さんの住む町に引っ越してきた。一緒に過ごす時間が増え、優しく抱き寄せられ、そのたびに愛されていると感じ、胸が高鳴った。心配した義母の反応は意外に好意的で、和雄さんが遊びに来ると食卓が華やぐと喜んだ。和雄さんも義母の誕生日には花を贈り、ドライブに連れ出した。
 狭い町で二人の交際はすぐに知れ渡り、近所の噂になった。長年の親友は「亡きご主人の顔に泥を塗るのか!」と非難して立ち去った。それでも美雪さんは後ろめたくなかった。
 22歳で結婚後、大家族の家事一切を任され、幼い義妹弟たちの母親代わりをし、夫の会社の経理事務を担った。いまも義母の世話に明け暮れる。仕事一筋だった夫は家庭を顧みず、「65歳になったら二人でのんびりしよう」と言いながら63歳で逝った。
 恋した男性との穏やかで幸せな時間を、やっと手に入れた。「亡き夫からの贈り物」とさえ思えた。
 夢のような日々は長くは続かない。3年前のある日、和雄さんが突然倒れ、救急車で運ばれた。そのまま入院となったが原因はわからず、診療科や病院を転々とした。病棟を変わるたびに「どういう関係ですか・・・

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女性は「肌寄せ、唇重ねるだけで幸せ」 高齢者の本当の性愛、千人調査
216円(税込)

夫と死別後、66歳で「恋人」と一夜をともにした女性は、唇を重ね、肌を寄せ合うだけで幸せだったと振り返る。50歳以上の男女千人へのアンケートでも、女性では「恋をしている相手」とセックスをしたいと思わない人が半数近かった。3人の女性の恋愛体験記とともに高齢者の「本当の性愛」の姿に迫る。[掲載]週刊朝日(2013年7月26日号、4600字)

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