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医療・健康
朝日新聞出版

夫は発達障害だった! 「アスペルガー」夫に悩む「カサンドラ」妻たち

初出:2014年8月29日号
WEB新書発売:2014年8月28日
週刊朝日

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 冗談が通じず、他人の言葉を額面通りにしか理解できない。特定の物事にこだわり、興味のある事は一方的に話し続ける。無表情で、孤立を楽しみ、音や匂いに敏感――。夫はアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の一形態)と診断されたが、すでに妻も夫の不可解な言動に苦しみ、「カサンドラ症候群」に陥っていた。「先天的な障害で治ることはない」とされるASD。耐えきれず、離婚を選択した妻も……。発達障害の夫の実例を紹介し、同じ悩みを抱える妻たちの新たな動きを追う。

◇「アスペルガー」の夫と暮らす妻たち
◇障害知らず成人、困惑する家族
◇悪気なさに耐え、悩んで離婚も
◇孤立する妻たち、自助グループも


「アスペルガー」の夫と暮らす妻たち

 シリーズ累計10万部を突破する話題のコミックエッセーがある。2011年1月発売の『旦那(アキラ)さんはアスペルガー』(コスミック出版)だ。今春までに4作が出版された。作者の野波ツナさんが、発達障害の夫(52)との波乱の家庭生活を赤裸々につづる。


 2人は漫画家と担当編集者として出会った。「年上の彼はとにかく穏やかで、感情の起伏が激しい私でも、この人と一緒にいたら穏やかな性格になれるんじゃないかとひかれました」
 結婚後は1男1女に恵まれ、念願のマイホームも手に入れた。ところが数年後、フリーランスで働いていた夫の仕事が激減する。生活費やローンについて話し合おうとすると、一方的にしゃべるのは野波さんで、夫は無表情でだんまり。「何を考えているかがわからず、一緒に解決策を考えられない。まさに暖簾に腕押しです。周りの人にグチると、『男ってそんなものよ』とさとされた。妻としての我慢が足りないのかと落ち込みました」
 2年半後、夫はようやく就職したが、社長とそりが合わず毎日グチばかり。最初は励ましていたが、8カ月後、お尻をたたくつもりで野波さんは言った。
 「そんなにイヤなら辞めちゃえば」
 すると翌日、夫は会社を辞めてきてしまった。妻の言葉、さらに社長の「(辞めたほうがいいと思うなら)そうなんじゃないか」という発言をうのみにした。おまけに300万円も借金があると打ち明けられた。
 理解不能な夫の言動に病気を疑って調べ始めると「アスペルガー症候群」に行き着いた。例えば突然の辞職は「言葉を額面通りにしか理解できない」という、この病気の特徴の一つに当てはまった。夫の母親から幼少時代の話などを聞き、専門医に相談すると「間違いない」と、診断が確定した。
 以後、野波さんは感情を抑え、整然かつ客観的な言い方を心がけた。
 「そうしないと夫は理解できない。ただ頭でわかっていても、ものすごくストレスでした」
 そのうち野波さんは追い詰められ、ひどい抑うつ症状や持病の悪化、重度のPMS(月経前症候群)に苦しむようになる。
 「何よりつらかったのが、『私のしんどさは、どうせ誰にも理解してもらえない』と精神的に孤立してしまったことです」
 そんな心境にも踏み込む一連のシリーズに、読者から「私だけだと思っていたから嬉しかった」「よくぞ描いてくれた」という切実な声が、想像を超えるほど多数寄せられている。「同じように悩んでいる人がこんなにいるなんて」と野波さんは驚きを隠さない。
 夫・アキラさんが診断されたアスペルガー症候群は「発達障害」の一種だ。脳の特定の部分に生まれつきある機能障害を指し、得意なことと苦手なことの差が極端に激しく、それが社会生活に支障を及ぼす可能性がある。発達障害はその行動や認知の特徴によって、主に「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」に分類される。アスペルガー症候群はASDの一タイプで、「知的障害や言語障害を伴わない自閉症」と定義され、(1)人との社会的関係を持つことの障害(2)コミュニケーションを持つことの障害(3)想像力と創造性の障害、の3点があり、具体的には表のような特徴がある・・・

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