【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

医療・健康
朝日新聞出版

早産治療薬塩酸Rの恐怖 妊婦・胎児に危険過ぎる副作用・死亡リスク

初出:2014年11月28日号
WEB新書発売:2014年11月27日
週刊朝日

このエントリーをはてなブックマークに追加

 「母体だけでなく、胎児の心臓にも危険」「今からでも、この薬の使用中止を呼びかけたい」と、名古屋大名誉教授の産婦人科医が警告する。「点滴されると心臓の鼓動が激しくなり、気持ちが悪く、ただ苦しいだけでした」と、妊婦が訴える。いま流産や切迫早産の治療薬として多用されている「塩酸リトドリン」には肺水腫、無顆粒球症、黄紋筋融解症を発症する重篤な副作用があり、死亡例もあった。なぜEUも問題視した薬を用いるのか。妊婦の知られざる危険な薬の背景を追う。

◇そんなこと、全然聞いていない
◇増加傾向にある低体重児出産
◇重篤な副作用、胎児にも心不全
◇説明なく安易に使われる恐れ


そんなこと、全然聞いていない

 愛知県に住む会社員のAさん(42)は3年前の妊娠中に、急に腹痛に襲われた。初めての出産を控えた妊娠18週目のことで、近くの病院に救急車で運ばれ、医師から、こう言われた。
 「流産しかけているから、張り止めの薬を点滴します。それしか方法はありません」
 張り止め薬とは、子宮の張りを抑えることで早産を治療するもの。Aさんは、当時の状況をこう振り返る。
 「点滴されたとたん、天井がグルグル回るように見え、意識を失いました。入院中ずっと点滴をし、心臓の鼓動が激しくなり、気持ちが悪く、ただ苦しいだけでした。食事ものどを通らず、精神的に不安定になってきて、『もう苦しいから赤ちゃんいらない』と叫んでおなかをたたいて……。今思うと頭がおかしくなっていたんだと思います」
 点滴を受け続ける入院生活は約2週間におよんだ。その後も、入退院を繰り返し、腕は点滴の針を刺す場所もないほど針の痕だらけの状態に。それでも37週目に男児を出産し、幸いにして母子ともに健康だった。
 しかし、Aさんは衝撃的な事実を突きつけられる。Aさんが「張り止めの薬」と説明されて点滴を受けた薬は、子宮収縮抑制剤「塩酸リトドリン」(一般名)といい、母子ともに重篤な副作用が指摘されているものだった。以前からこの薬の危険性を訴えてきた、名古屋大学名誉教授(産婦人科)の水谷栄彦医師は、こう話す。
 「塩酸リトドリンは分子量が小さく、母体に投与されると胎盤を簡単にすり抜けて胎児に届くため、母体だけでなく、胎児の心臓にも危険なのです。EUでは2013年10月、『リスクがベネフィット(利益)を上回る』として内服薬が承認取り消し、点滴薬が使用制限される事態になっています」
 EUの欧州医薬品庁が指摘したリスクとは、母子両者に重篤な心血管系副作用が生じること。内服薬と点滴薬、いずれもリスクがあり、内服薬はベネフィットなし、点滴薬は子宮収縮抑制剤としての使用を48時間以内に制限した。
 Aさんは、赤ちゃんにも重篤な副作用の危険性があることを聞いて憤る。
 「そんなことは全然聞いていない。それを知っていたら、絶対に点滴を拒んだのに。これでもし赤ちゃんに影響があったら、あんなに苦しんで点滴に耐えたのはなんだったのか・・・

このページのトップに戻る