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医療・健康
朝日新聞出版

認知症を治せる日は来る 未来に希望をつなぐ日本の最先端治療研究

初出:2015年1月2―9日合併号
WEB新書発売:2015年1月8日
週刊朝日

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 アルツハイマー型認知症治療のカギは脳内のアミロイドβ、タウという2つのタンパクを早く見つけ、ためないこと。この分野では最近、日本人が世界初の2つの有効な治療法を発表した。アミロイドβの蓄積の有無はノーベル賞受賞者、田中耕一氏の「質量分析システム」を用い血液検査することで判別可能に。タウの蓄積の有無は、放射線医学総合研究所の脳分子動態チームが可視化に成功、根治薬を開発中だ。脳研究で認知症の仕組みの解明も進む……。希望が見えてきた認知症治療の最先端を紹介する。

◇認知症治療、未来への希望
◇わずか0・5ccの血液で判別可能
◇タウ研究に期待、根治も可能に?
◇どんどん進む脳の仕組みの解明


認知症治療、未来への希望

 アルツハイマー型認知症では、まず脳にアミロイドβというタンパクが蓄積し、そのあとからタウというタンパクがたまりだし、神経細胞が壊れて脳が萎縮していく。したがって、この「アミロイドβ」と「タウ」という二つのタンパクを、いかに早く見つけて、ためないようにするかが、治療のカギとなる。
 各国の研究者がしのぎを削るなか、日本から「世界初」となる研究結果が2013年、14年と相次いで報告された。一つは、「ほんの少量の血液で、アルツハイマー型認知症が発症する前にアミロイドβの蓄積を検出する方法」、もう一つは、「人間の脳でタウのたまり具合を可視化する方法」だ。

わずか0・5ccの血液で判別可能

 前者は、14年11月に発表されたもので、02年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所(京都市)の田中耕一氏(シニアフェロー)が所長として率いる開発グループと、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の共同研究によって生み出された。国立長寿医療研究センターが収集した血液を、田中氏の質量分析システムを用いて解析した。


 具体的に、どんな研究が行われたのか、同センター認知症先進医療開発センター長の柳澤勝彦氏は、こう説明する。
 「まず、脳にたまったアミロイドβを可視化できる『アミロイドPET』(後述)を用いて、被験者の高齢者の脳を撮影し、アミロイドβの蓄積がみられるグループと、蓄積がみられないグループに分けました。そして、被験者から採取した血液のなかの血漿成分(赤血球、白血球、血小板を除いた透明な成分)を、島津製作所にある質量分析システムにかけ、その解析結果を両グループで比較検討したのです」


 すると、蓄積がみられた高齢者の血液データと、蓄積がみられなかった高齢者の血液データとでは、その結果に決定的な違いがあることがわかった。アミロイドβとそれに関連するタンパクの比が、アミロイドβが蓄積しているグループと蓄積していないグループとで、違っていたのだ。
 血漿のなかには、病気の手掛かりとなるさまざまな情報が含まれている。そのため、アルツハイマー型認知症の発症につながる情報もあるのではないかと、世界各国の研究者が研究していた。しかし、これまで多様な方法が試みられたが、関係する情報をうまく抽出することができずにいた。
 「血液から発症に関連する物質を取り出すのは不可能だと、私も含め、多くの研究者は思っていました」(柳澤氏)
 しかし、田中氏らが開発したシステムは違っていた・・・

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