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政治・国際
朝日新聞出版

後藤健二さんの死に便乗?する人たち

初出:2015年2月20日号
WEB新書発売:2015年2月19日
週刊朝日

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 日本人ジャーナリストの後藤健二さんが殺害されてから、国内外で追悼の声が相次ぐ一方、中東の地を舞台とした争いは終わる気配を見せない。「憎むは人の業にあらず」。後藤さんはツイッターにこんな言葉を投稿していたが、皮肉にも憎しみの連鎖は続いている。日本国内では、いわゆる「戦える国」をめざす発言も目立ってきた。一方で、人質救出作戦は軍事的な難易度が高く、日本の自衛隊にはとても無理、という指摘もある。

◇後藤さんの死、便乗する人たち
◇人質救出作戦は米軍でも難しい
◇人質交渉の失敗、消えない疑問点
 ・後藤健二さんが残した言葉
 ・テロ、人質事件をめぐる安倍首相の発言
◇「これで萎縮するなんて、後藤さんだって望んでいない」


後藤さんの死、便乗する人たち

 2010年9月7日、後藤健二さんは自身のツイッターアカウントに、こんな言葉を投稿していた。
 「憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。―そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」


 このメッセージは共感を呼び、4万回以上も転載(リツイート)された。
 だが、後藤さん亡き後の世界は「神の裁き」に夢中だ。赦すことよりも、憎しみの連鎖が止まらない。
 ヨルダン軍は2月5日、イスラム過激派組織「イスラム国」への空爆を再開した。イスラム国に拘束されていたヨルダン軍パイロットのムアーズ・カサースベ中尉を焼き殺した動画が4日に公開されたことへの報復だ。同日には、イスラム国が解放を求めていたサジダ・リシャウィ死刑囚ら2人を処刑した。ヨルダンで取材を続ける朝日新聞特派員の三浦英之記者は言う。
 「ヨルダンではこれまで、イスラム国に対する米国主導の有志連合への参加に反対の市民も多かった。それが、中尉殺害の残虐な動画が公開されてから一変しました。今では国中がイスラム国への怒りに満ち、空爆への支持も広がっています」
 これらは決して遠い国の出来事ではない。すべてを赦そうとした後藤さんの遺志と裏腹に、日本でも「戦える国」への準備が進む。安倍晋三首相は3日、自民党議員が開いた会合で、
 「日本は変わった。日本人にはこれから先、指一本、触れさせない」
 と語ったという。新しいテロ対策についても、
 「海外で邦人が危害にあったとき、自衛隊が持てる能力を十分に生かせない」(1月25日)
 「海外で邦人が危険な状況に陥ったときに輸送はできるが、救出も可能にするという議論をこれから行っていきたい」(2月2日)
 と、具体的な内容にまで言及した・・・

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