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食い物にされる認知症患者 成年後見制度を悪用

初出:2015年6月26日号
WEB新書発売:2015年6月25日
週刊朝日

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 認知症患者が推計500万人の時代に突入した、と言われる。その6割が詐欺や余計な買い物などの経済被害にあった経験がある、という調査もある。患者の急増で法制度が対応する時間がなく、悪徳業者に食い物にされるケースも目立っているという。あなたの身近にいる認知症患者も狙われているかもしれない。

◇食い物にされる認知症患者/悪用される成年後見制度
◇認知症患者に公正証書遺言を作成させるトラブルが増加


食い物にされる認知症患者/悪用される成年後見制度

 「こんな家、売ってやる!」
 東京都内で認知症を患う兄を介護する城谷陽子さん(仮名・70代)は、ある日、兄の成年後見人である司法書士からこんな罵声を浴びせられた。
 発端は、昨年12月だ。兄の高島亮さん(仮名・80代)の自宅で一緒に住む陽子さんのもとに、後見人が270万円の支払いを請求してきた。亮さんの自宅は、土地の部分が別の人の所有物となっている。この金額は、借地権の更新料で、同居する陽子さんが払うべきだと説明された。
 だが、陽子さんは兄の生活を支えるために一緒に住んでいるものの、住宅の所有者ではない。当然のように支払いを拒否すると、後見人は亮さんの自宅を売る準備を始めたという。
 亮さんを担当するケアマネジャーも憤っている。
 「私は、亮さんの後見人と一度も会ったことがないんです。一般的に後見人とケアマネジャーは、お互いに相談しながら介護プランを考えるもの。なのに連絡が一切取れないので、一時期は必要な介護保険も使えなかったんです」
 成年後見制度は、判断力や生活力が弱い認知症の高齢者や障害者に代わって財産管理をしたり、行政手続きを担ったりするものだ。
 亮さんの後見人は、2013年に家庭裁判所が選任した。先述したように、後見人は亮さんの生活に何の関心もない。一方、不動産の売却については熱心に動いていた。
 後見人が亮さんが居住する住居を売却するには、家庭裁判所の許可が必要となる。後見人は、住宅の共同所有者である亡き息子の妻に売却の意思があることを確認。そして陽子さんにも、売却が更新料の負担をなくすための唯一の方法だと迫った。なぜ、不動産売買には熱心なのか。ある介護関係者はこう解説する。
 「後見人は、不動産を売却すると、売却額の一部を追加の報酬として受け取ることができます。そのため、財産管理と称して不動産の売却で儲けようとする後見人が後をたたないんです」
 認知症患者の増加とともに、制度を悪用し、儲けようとする悪質な弁護士や司法書士も増えているのだ。
 最高裁判所の調査によると、制度の利用者数が増え続けるなか、解任される後見人の数もそれに比例して増えている。13年に解任された後見人は565件にのぼり(グラフ参照)、うち、財産の横領など不正行為を理由に家庭裁判所が職権で解任した「職権解任」は380件だ。これは、解任件数の約67%を占める・・・

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