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朝日新聞出版

好物は認知症 ハイエナのような金融機関

初出:2015年11月13日号
WEB新書発売:2015年11月12日
週刊朝日

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 認知症の高齢者らが高額な金融商品の購入を契約させられ、トラブルになる例が相次いでいる。空前の低金利が続き、金融機関側は通常の預金や貸し付けでは利益を上げにくい。一方で金融自由化が進み、取り扱える商品の幅は広くなる傾向にある。知識や経験の浅い人にリスクの高い金融商品を売ることや、短期間で売買を繰り返させる行為(回転売買)は規制されているが、金融庁が積極的に動くことは期待しにくい。「成年後見人」制度など、身を守る術はいくつかある。

◇「回転売買」で40回もファンド買わせる/多額の手数料を抜き、ノルマを達成
◇法の不備を盾に開き直る銀行側
◇動かない金融庁、防御策は後見人


「回転売買」で40回もファンド買わせる/多額の手数料を抜き、ノルマを達成

 「こんなにたくさん買っていたのか」
 2年ほど前、東京都心に近い一軒家に住む認知症の80代女性の後見人になった司法書士の男性は、大手信託銀行が送ってきた数枚の文書を読んで目を疑った。
 それは女性が信託銀行から買った金融商品の一覧表だった。金融商品売買にかかわる法律、金融商品取引法(金商法)は「適合性の原則」(第40条)をうたっている。
 簡単にいえば、投資の目的に合わないリスクの高い商品を、金融機関が知識や取引経験の浅い人に売るのを禁じているのだ。
 銀行は顧客に対し、リスクも含め、商品内容をきちんと説明し、理解させたうえで売買する必要があるが、認知症の高齢者は、その理解力や買うかどうかを判断する能力が疑わしい。
 なのに、この女性は2008年以降、認知症と診断されてからも多額の金融商品を買い続け、計40回にも及んだ。
 1度や2度会ったぐらいなら認知症かどうか判断しかねても、何十回も取引していれば、営業マンも女性が認知症であることはわかっただろう。女性が商品内容を理解できないのをいいことに、言うままに手数料の取れる金融商品を買わせていたのではないか――。
 しかも、女性が買った商品の多くが元本割れしており、12年暮れまでの投資金額は計1億円以上に上り、そのうち、半分以上が損失となって消えていた。一方で銀行が得た手数料は1500万円に上った。
 40回の取引を個別に調べていくと、金融庁が規制する「回転売買」にあたる疑いも出てきた。
 「回転売買」とは、顧客に金融商品を短期間でくるくる買い替えさせて、金融機関が多額の手数料を抜く売買のことで、顧客の意向を尊重せずに金融機関が自己利益の追求をする取引になるとして、金融庁はこれを規制している。
 この女性の場合も、購入の数カ月後に解約し、また、新たに商品を買うというパターンを繰り返しており、毎月、購入か解約のどちらかが必ずある、という状態だった。そのたびに数十万円の手数料が抜かれ、銀行は儲かる一方で、女性の資金は逆に失われていった・・・

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