世相・風俗
朝日新聞出版

私を死ぬまで介護して 熟年事実婚の問題と対策

初出:週刊朝日2016年2月5日号
WEB新書発売:2016年2月4日
週刊朝日

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 「君を一生介護したい」。そんな言葉でプロポーズした男性がいる。少子高齢化が進んで「熟年結婚」をするカップルが少なくないが、正式な婚姻届を出さない「事実婚」も多い。お互い子どもや孫がいて、それぞれの生活を壊したくないという気持ちがあるのかも知れない。ただ、事実婚には障害もある。「互いの墓に入れない」「相続や遺族給付金などの手続きで問題が起こる」……。事実婚の問題点と解決策を探った。

◇自由を謳歌、肌ツヤツヤ 「同じ墓に入れない」
◇準婚姻契約書でサイン代行が可
◇内縁は入れぬ墓、お骨抱いて悩む
◇求婚のことばは「一生介護したい」


◇自由を謳歌、肌ツヤツヤ 「同じ墓に入れない」

 都内在住の小倉健二朗さん(72)は、4年前に4歳下の女性と付き合い始めた。
 「最近、若返ったって周りに言われるんです」
 確かに肌の血色がいい。小倉さんは約10年前に仕事をリタイアし、5年前に38年連れ添った妻をがんで亡くした。長女、長男、次女と3人の子供がいて、妻の死後は未婚の次女と暮らしていたが、やがて次女が自立。途端に孤独を感じた。
 「このまま話し相手もいないのは寂しすぎる」
 70歳を目前にし、小倉さんは中高年専門の結婚情報サービス「茜会」に入会。そこで数人とお見合いをした。
 「なかなかうまくいかなかったけど、半年経って会主催のパーティーに参加したら、運命の人がいた!」
 会場の扉を開けたとたんに、ある女性に釘づけになった。なんて上品……数歳違いの彼女に一目惚れ。聞けば彼女も夫と死に別れて、子供は同じく3人。
 「すぐにデートに誘いました。ディズニーランドに行きませんかと」


 待ち合わせた舞浜駅でドキドキ。果たして彼女は、お洒落をしてやってきた――それからずっと小倉さんは彼女と一緒だ。だが付き合って数カ月後にすったもんだがあった。
 「入籍を視野に入れ、子供に紹介するために会食を予定した。そしたら前日に彼女が断ってきたんです」
 彼女の言い分はこう。
 「住んでいる地域に友人もいるし互いに子供もいて、縛られるのは本意ではない」
 交際そのものが途絶えそうになり、慌てた小倉さんは、「籍は関係なくお付き合いを」と伝えた。それを彼女が承諾し、互いの子供に「会うことなく」二人だけの思い出を作っている。事実婚の始まりだ。
 「毎月1回、彼女が家に泊まりに来るんですが、濃密な時間です。僕は名前で向こうは『あなた』と呼ぶ。毎日一緒にいないので3年経っても新鮮で」
 泊まりに来るたびに愛を育み、滞在中に彼女は大きな鍋でシチューやカレーを10日分くらい作ってくれるのだという。互いの生活費には関与しないが、旅行に行く際は小倉さんが支払う。京都や上高地などに今まで17回も旅をした。しかし今生こんなにラブラブな二人も、死後は別だ。
 「僕は代々の墓に前妻と、向こうは前夫の墓に入る」
 小倉さんは今も前妻の月命日に墓参りを欠かさない。そこに彼女は同行しない。子供たちに相手の連絡先も伝えていない。
 「毎晩8時に電話を僕からかけているけど、その後に倒れたりしたら……そのまま会えなくても仕方ない」
 茜会の社長、川上喜彦さんによれば、60歳以上の会員は51%(2015年)。高齢化のなか、熟年層の婚活相談は着々と増えている・・・

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私を死ぬまで介護して 熟年事実婚の問題と対策
216円(税込)

「君を一生介護したい」。そんな言葉でプロポーズした男性がいる。少子高齢化が進んで「熟年結婚」をするカップルが少なくないが、正式な婚姻届を出さない「事実婚」も多い。お互い子どもや孫がいて、それぞれの生活を壊したくないという気持ちがあるのかも知れない。ただ、事実婚には障害もある。「互いの墓に入れない」「相続や遺族給付金などの手続きで問題が起こる」……。事実婚の問題点と解決策を探った。[掲載]週刊朝日(2016年2月5日号、5000字)

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