【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

医療・健康
朝日新聞出版

冷蔵庫に財布をしまうな 30代認知症の恐怖

初出:2016年4月8日号
WEB新書発売:2016年4月7日
週刊朝日

このエントリーをはてなブックマークに追加

 「通勤で反対の電車に乗ってしまった」。「冷蔵庫に財布をしまってしまった」。30〜40代に認知症の不安が広がっている。原因の一つがネット。双方向・プライベートなコミュニケーションなどと言われることもあるが、検索などを使ってWEBサイトを見ている限り、情報の流れは一方通行。個人の背景に合わせた話が出ている訳でもなく、実はマスメディアとあまり変わらない。友人や同僚に相談すれば共感・忠告してもらえたりするが、ネットだと1人で悩む傾向がある。認知症ではなく、うつ病や統合失調症だった場合もある。いずれにせよ、治療や予防が重要だ。

◇30〜40代を襲う『認知症恐怖』
◇うつが原因で記憶力が低下
◇思っているほど脳は衰えない


30〜40代を襲う『認知症恐怖』

 まだ若いのに「やばいっ、認知症かも!?」と恐れおののく人が少なくない。大事な仕事をうっかり失念したり、地名や人名がとっさに思い出せなかったりし、思わず自分のアタマを疑ってしまう。問題ないケースもあれば、受診したほうがいい場合もあるので要注意だ。

 「これもやってくれない?」
 法律事務所に勤める40代半ばの女性Aさんは、半年ほど前から、上司が何気なく言うこの言葉にビクッとするようになった。
 新しい仕事を振られると、並行してやっている仕事の一つ、二つが意識から抜け落ちてしまうのだ。
 あとで仕事をやり残したことに気付くため、大きなミスにつながったことはない。でも、以前はそういう『物忘れ』はなかった。
 考えてみると、物忘れは仕事だけではない。友人との食事で同じメニューを何度もオーダーしたり、精算時に簡単な割り算を間違えたり、共通の友人の名前が出てこなかったり。不安と焦りが募る。
 「やばい。私、もしかして認知症かも……」
 一般に、認知症は高齢期に発症する。ところが最近、「自分もそうではないか」との不安が、30代、40代にも広がっている。
 「そういう相談が圧倒的に多いのは50代以上ですが、その下の年代でも『仕事で失敗することが増えた』『ケアレスミスを上司から指摘された』『物忘れが増えている』などと言って、認知症を心配される方が出てきています」
 そう話すのは、OHコンシェルジュ(横浜市)の代表取締役で産業医の東川麻子さんだ。従業員から一通り話を聞いた後、仕事の状況や体調などを評価する。上司にそれとなく社員の様子を確認することもある。
 「たいていは疲れや睡眠不足で仕事のパフォーマンスが落ちているだけ。聞いている限り、『正常の範囲』であることが多い。『大丈夫ですよ』と保証してあげると、ほっとした顔をされます」(東川さん)
 この年代の人が「認知症かも」と不安がる背景には「インターネット社会の影響がある」と、東川さんは分析する。
 「今の30代、40代以下は情報をネットで収集する。『若い』『物忘れ』などのキーワードで検索すると、若年性認知症などの情報がヒットします。そこから自己判断してしまうのではないでしょうか」
 ネットは基本的に情報の流れが一方通行だ。しかも、一人ひとりの背景に合わせた情報が出ているわけではなく、そのときの流行の言葉が並びがちだ。ネガティブな情報に過剰にさらされ、自分もそうかもしれないと考え始めてしまう。
 「友人や同僚などへ相談すれば、『わかる!』『私もそう!』などと共感してもらえたり、『忙しくて疲れているんじゃない?』とアドバイスしてもらえたりします。ネットだけだと、一人で悩んで、一人で結論付けてしまいがちなのでしょう」(同)
 そういう漠然とした不安が慢性的に続くと、自信喪失からうつ状態に陥りやすい。仕事にまじめな人ほど注意が必要で、「気になることがあれば、ネットでなく、まずは上司や同僚、産業医などに相談を」と東川さんは呼びかける。
 実際に物忘れ外来などを受診する30〜40代もいる。年間約400例の脳ドックをする立川病院(東京都立川市)の脳神経外科医長の福永篤志さんは言う・・・

このページのトップに戻る