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朝日新聞出版

中流家庭に忍び寄る隠れ貧困 そして夢見る下流老人へ

初出:2016年7月8日号
WEB新書発売:2016年7月7日
週刊朝日

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 「隠れ貧困」(荻原博子著、朝日新書)という本が売れている。「定収もあるし貧困なんて他人事」と思ったら大間違い。40〜50代は収入はそこそこあっても、子どもの教育費や「おつきあい」の出費がかさみ、リストラの対象にもなりやすい。さらにこの年代は若い頃に空前の好景気「バブル経済」を体験している。この時期に創刊された女性誌に連載を持っていた荻原さんは「人生を謳歌したい、という夢を読者は抱いてきた。夢が覚めないまま貧困に陥る」という。貧困の結果どうなるのか。朝日新書では「下流老人」(藤田孝典著)という本も売れているのだが……

◇見た目ハッピィ、中流家庭でも破綻の恐怖
◇【対策編】隠れ貧困を防ぐ
◇「お金をためられない」心理学で読み解くと/山脇由貴子さん


見た目ハッピィ、中流家庭でも破綻の恐怖

◎荻原博子著「隠れ貧困」が売れている
 「ホントのお金持ちと結婚すればよかった」
 東京都内の吉田慶子さん(仮名・42歳)は、通帳の残高を見てため息をついた。ビューラーでぱっちりさせた目元と、くるっと巻いたロングヘア。華やかな雰囲気の顔が曇る。
 「ママー。今日から私、スイミング、毎日よね」。長女の元気な声に、はっと我に返る。「そうよ、選手養成コースに入ったから。がんばらないとね」。精いっぱいの笑顔で答えた。
 慶子さんは長男(11)と長女(8)の2人の子を育てる。夫(36)は不動産会社に勤め、年収700万円。昨年買った中古マンションに4人で暮らし、愛車は350万円超の外国車。どこにでもいる幸せそうな「中流」家庭に見える。
 しかし、家計のやりくりが大変で、最近は夫婦げんかが絶えない。
 原因の一つが、習い事の費用。長男は野球と水泳。長女は水泳、習字、バレエ、ダンス。毎月計7万円。支出の2割に達する。
 水泳好きの長女は最近、コーチの勧めで強化選手に選ばれた。慶子さんは「できる限り応援したい」と思い、練習日を増やした。出費は増えるが、子への投資は今や生きがいの一つだ。
 さらに家計を圧迫するのが、慶子さんの買い物。独身時代はブランドにはまり、「ブルガリが好きで、ビー・ゼロワンシリーズのアクセサリーなどを集めた」。今は昔のようには買えなくなったが、「ママ友会があるから服を新調しなきゃ。また、リボ払いかな」と笑う。
 雑誌「VERY」の読者モデルに憧れる。30代後半〜40代前半のセレブママに人気の雑誌。7月号の特集記事は、〈夏のママは、見た目もハッピィ〉〈夏休みは「美容家電」で自分バージョンUP!〉など、軽やかな見出しが躍る。
 慶子さんは言う。
 「読者モデルのように、ママになってもキレイで、子育てを充実させ、ママ友ともうまくいくのが理想。でもママ友が多いとお金はかかるし、ホテルでの誕生日会にはおしゃれが必要。習い事への出費も多く、家計はきゅうきゅうなんです」

◎子どもへの投資、親の強迫観念に
 そこそこ収入があるのに貯金できず、将来貧困に陥る恐れがある。そんな中流家庭の危機を、経済ジャーナリストの荻原博子さんが著書『隠れ貧困』(朝日新書)で紹介している。荻原さんはこう警鐘を鳴らす。


 「貯金できない中高年世代は、決して珍しくない。最近の親は、子にお金をかけなければと『教育恐怖』のような強迫観念を抱く人がいる。子どもにお金をかけすぎると、ためられない。年収800万円の家庭でも老後破産がありうる・・・

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