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朝日新聞出版

日本に正社員がいなくなる日 厚労省報告書の衝撃

初出:2016年10月7日号
WEB新書発売:2016年10月7日
週刊朝日

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 今の日本は「拡大」から「縮小」への転換期にある。それは「終身雇用」「年功序列」といった「古き良き労働秩序」を柱としてきた雇用も例外ではない。厚労省懇談会の報告書「働き方の未来2035」が注目を集めている。派遣など働き方の多様化はさらに進み、人工知能はさらに進化するだろう。会社を経営する側からすれば、コストが高い「正社員」などもう必要ない、というのが本音かも知れない。経営の論理だけで物事を決めてはいけないが、今の労働組合は「古き良き労働秩序」の中にどっぶり浸っていないか…。

◇2035年、正社員が消える/20年後の「働き方大革命」報告書
◇報告書に対する労働界からの批判に答える/ジャーナリスト・磯山友幸


2035年、正社員が消える/20年後の「働き方大革命」報告書

 AI(人工知能)やロボットとの共存が当たり前になる20年後、日本の会社から正社員は消えている――。衝撃的な未来を予測した厚生労働省の報告書「働き方の未来2035」が注目されている。企業が続々と副業や兼業、在宅勤務を解禁するその先に何があるのか?

【2016年50歳→2035年69歳 女性】
 《50過ぎまでは、会社で経理を担当していました。でも、経理業務はどんどんAIに代替されていきました。15年ほど前に転職し、いまは地域の病院に勤めながらカウンセラーの資格も取得しました。私の仕事は、AIを使った問診のお手伝いです。患者さんは不安で「すぐ治りますよ」と声をかけるだけで気持ちの支えになり、人間にしかできない仕事です》

【2016年36歳→2035年55歳 男性】
 《自動車メーカーA社に勤めていました。自動運転技術が出はじめたころ、職場の仲間数人で「自動運転の警備巡回マシンをつくろう」と盛り上がり、本業のかたわら開発に打ち込みました。製品化して会社を立ち上げましたが、収益化には時間がかかりそうだったので、週の半分はA社に勤務し、残りの半分で自分たちの会社を経営していました。3年ほど経ったころからビジネスが軌道に乗り、A社を退職して自分たちの会社の経営に専念しました。世界各地に赴き営業し、いまでは50カ国以上の警備会社に採用されています》

【2016年61歳→2035年80歳 男性】
 《新卒で入社した会社の定年は65歳でしたが、人手不足で結局70歳まで働きました。といっても66歳からは小さな会社を起業したので、それが副業となり、71歳以降も働くことにしました。といってもインターネットで受注したボランティアの仕事です。私の専門だった仕事はすっかりAIを搭載したロボットに取って代わられたのですが、文化保護団体が昔の仕事のやり方を保存したいということで、私に仕事が来ます》

 ――実はこれ、AIなどの技術が進化した2035年を舞台とした働き方のシミュレーションで、厚生労働省が8月に発表した報告書「働き方の未来2035」に登場する未来予想図だ。
 30ページに及ぶ報告書の冒頭にはこう記されている。
 《2035年にはさらなる技術革新により、時間や空間や情報共有の制約はゼロになり、産業構造、就業構造の大転換はもちろんのこと、個々人の働き方の選択肢はバラエティに富んだ時代になる》


 報告書でAIは、人から職を奪うネガティブな存在としてではなく、さまざまな問題を解決するテクノロジーとしてポジティブにとらえられている。
 今後、AIが使われると予測される分野はマーケティング、経理、金融、医療、教育、法律、人事、警備・防犯、農業、物流、土木・建築など多岐にわたる。代替される可能性が高いのは、認識や動作の習熟を必要とするものの、判断を必要としない定型的な業務だ・・・

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