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朝日新聞出版

デパガ論評・警視庁エロ征圧… 週刊朝日の特報で現代史学び直し

初出:週刊朝日2017年3月3日号、3月10日号
WEB新書発売:2017年3月9日
週刊朝日

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 1922年創刊の「週刊朝日」の記事で現代史をたどってみよう。なんと35年には各店のデパートガールを論評し、「三越は理知的な健康美」など早くも週刊誌らしい一面を見せる。「ジュースで乾杯のヤクザ解散式」(64年)、「エロ征圧にハッスルする警視庁」(65年)、「カメラが見破った超能力のトリック」(74年)など、今でも読んでみたい記事もある。開高健のベトナム戦争ルポ(65年)、田原総一朗の連載・電通(81年)、TV番組を打ち切りに追い込んだ特ダネ「納豆ダイエットの大ウソ」(07年)など貴重な記事もあった。

◇第1章 [創刊〜1930年代] 阿部定「あたしのものにしたのよ」/第2次世界大戦は「切迫しておらぬ」
◇第2章 [1940〜50年代] 東条英機の自殺未遂に遭遇/太宰治の愛人の日記をスクープ
◇第3章 [1960年代] 開高健が見た戦火のベトナム/新幹線は「不安な乗り物」?
◇第4章 [1970年代] 元日本兵「君は戦争を知らない」/ヒゲの殿下「なぐり返すだけよ」
◇第5章 [1980年代] 美空ひばり『最後』の手紙/26歳ビル・ゲイツの素顔
◇第6章 [1990年代]偽装入信の母、点滴7本/常識外れの大蔵官僚接待
◇第7章 [2000〜10年代] スクープ納豆ダイエットのウソ/事件後のりピー独占告白
◇第8章 [コラム] 「死にたい病」だった太宰 母が口にした富栄への「感謝」/太田治子さん
◇第9章 [コラム] 週刊朝日と父・花森安治/長女・土井藍生さん
◇第10章 [コラム] 司馬さんとみどりさんが憧れた「財布に千円札が入っている生活」


第1章 [創刊〜1930年代] 阿部定「あたしのものにしたのよ」/第2次世界大戦は「切迫しておらぬ」

 1922(大正11)年に生まれた著名人を挙げると、漫画家の水木しげる、俳優の丹波哲郎、作家の三浦綾子、ダイエーを創業した中内功、元首相の宇野宗佑……以上のみなさんは鬼籍に入った。ご存命なのは、瀬戸内寂聴、内海桂子、ドナルド・キーンといった方々。週刊朝日も同じ年に誕生し、このほど「95歳」を迎えた。
 本誌は同年2月25日に創刊された。第4号までは毎月5、15、25日に発行する「旬刊朝日」。4月から「週刊朝日」となった。
 創刊号をひもとくと、国内外の報道・解説をはじめ、小説、演劇評、経済リポートなどが見える。
 「我人口と食料の調節」と題した記事では、日本の人口の増加にコメなどの供給が追いつかないとして、「移民」「輸入」「産児調節」の必要を訴える。
 最近、トランプ米大統領がイスラム系7カ国の国民や、難民の入国を禁止したニュースが大きく報じられた。当時の記事では、日本人が積極的に満州やシベリアに移り住む一方、北米から移民を拒まれている問題に腐心している。深刻な少子化時代となった今からすれば、産児の制限を大まじめに検討している様子は奇異にさえ映る。
 「児童を殺し教師を毒する」との記事は、受験勉強の過熱ぶりを問題視。始業の2時間前に登校して放課後も2時間勉強する、帰宅後は家庭教師が2〜3時間教授する……という実情を挙げ、「点さえ多く取れればよい、実力のつくつかぬなどは頓着するところではない」と批判。受験戦争は95年前にすでに激化していたのだ。
 創刊の翌年9月には関東大震災があった。9月16日号では、米英中が盛んに救援運動をしていることを挙げ、「権力闘争に逆転しつつあった世界は、ここに初めて国境以上のあるものに崇高な任務を発見し、人類一致の努力を捧げている」「この博愛精神を如何にすれば人類常時の糧となしうるか」などと主張している。各国がこぞって軍拡を進めた時代。震災報道にも、国際的緊張の高まりがうかがえる。
 本誌は「世人の便益向上、ご慰安を理想として生まれた」と記録されるが、現在の多くの週刊誌と同様、男と女の業には古くから敏感だった。
 36年5月には「『わたしのあなた』事件」との大きな見出し。仲居だった女性が愛人の男性を殺害して局部を切り取った「阿部定事件」の詳報である。事件前後の定の足取りを追跡し、イラストで図解する凝りよう。凄惨な現場の描写、「好きでたまらないから殺してあたしのものにしたのよ」「あたしのものになっちゃったんだから」といった定の言葉、彼女の生い立ちをまとめた誌面は、今でも読み応え十分。約80年後の2015年8月、弁護士が不倫相手の夫に局部を切断された事件の記憶と重なる。
 31年の満州事変を経て日中戦争は泥沼化していく。ドイツのヒトラー、イタリアのムソリーニの台頭で欧州の危機が叫ばれた39年5月には、軍事評論家の伊藤正徳(後の共同通信社理事長)▽東京帝大教授の今井登志喜(西洋史学)▽法大教授の堀真琴(後の参院議員)▽ダイヤモンド主筆の野崎龍七▽外交評論家の清澤洌(『暗黒日記』の著者)――による座談会を実施。独伊英仏の外交、経済、人口、軍備といった面から、列強の行方を分析している。
 「独伊、英仏が均衡を保てば平和的な方法で方向転換すると思う」(堀)、「ヒトラーにもムソリーニにも今はまだ戦争の意思はない」(清澤)との見方が大勢を占め、「切迫はしておらぬ」と見出しを立てた。仮に戦争になれば、日中戦争をしている日本は「参戦すべきでない」としている。
 だが、そのわずか4カ月後にはドイツがポーランドに侵攻。直後に英仏がドイツに宣戦布告し、第2次世界大戦が始まる。翌年9月には日独伊三国軍事同盟が締結され、日本も太平洋戦争に突き進んでいく――・・・

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デパガ論評・警視庁エロ征圧… 週刊朝日の特報で現代史学び直し
216円(税込)
  • 著者小泉耕平、森下香枝、太田サトル、藤村かおり、多田敏男、村井重俊
  • 出版社朝日新聞出版
  • 出版媒体週刊朝日

1922年創刊の「週刊朝日」の記事で現代史をたどってみよう。なんと35年には各店のデパートガールを論評し、「三越は理知的な健康美」など早くも週刊誌らしい一面を見せる。「ジュースで乾杯のヤクザ解散式」(64年)、「エロ征圧にハッスルする警視庁」(65年)、「カメラが見破った超能力のトリック」(74年)など、今でも読んでみたい記事もある。開高健のベトナム戦争ルポ(65年)、田原総一朗の連載・電通(81年)、TV番組を打ち切りに追い込んだ特ダネ「納豆ダイエットの大ウソ」(07年)など貴重な記事もあった。(2017年3月3日号、3月10日号、19400字)

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