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朝日新聞出版

僧侶残酷物語 年収3万円・副業に飛び回る住職・朽ち果てた寺…

初出:週刊朝日2017年6月30日号
WEB新書発売:2017年7月13日
週刊朝日

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 関東地方のある住職は、昼間はあまり寺にいない。生活のため清掃のアルバイトに出かけているからだ。ひそかに袈裟を着替え、他宗派のお経を勉強して法要をしたこともある。一般にはあまり知られていないが、経済的に厳しい僧侶が珍しくない。人口減や地方の過疎化、寺と檀家の関係が変わったことなどが背景にあるようだが、寺が一種の「既得権益」と化して社会の変化についていけてないのではないか、との指摘もある。

◇第1章 生計のために『モグリの坊主』にも
◇第2章 食えない寺は潰すしかないのか…


第1章 生計のために『モグリの坊主』にも

 都心から車で走ること3時間。街並みは消え、田園風景も抜けて、うねる山道をひたすら登っていく。ガードレールもない細い崖道を入り、山奥へさらに進むとその寺はある。山間にひっそりある集落で、緑生い茂る山の斜面に沿って木造家屋が点在している。小さな畑の脇、老婆がてんびん棒を肩に担いで農作物を運び、時間の流れをどこかへ落としてきてしまったかのような錯覚さえある。世帯数は20弱で若者はいない。関東地方の典型的な過疎地域だが、日蓮宗のその寺はそこにある家々の檀那寺だ。
 寺は一般的に思い浮かべるような寺院然とはしておらず、一般住宅と言われても納得してしまいそうな平屋建て。屋根の塗装はところどころはげ、前庭に並ぶ墓石は伸びきった雑草に囲まれ、こけむし、傾いているものもあり、手入れがされている様子はない。
 どう見ても裕福な寺には見えないが、経済事情はどうなっているのか。住職に話を聞こうとしたが、昼間だというのに不在。隣に住む女性が教えてくれた。
 「この時間は働きに出ているので、誰もいませんよ」
 どういうことなのか。時間を空け、在宅時に改めて話を聞くと、住職は力ない声で答えた。
 「週に5日、外でアルバイトをしているんです。お寺とは何も関係のない仕事です。お寺の収入? ないに等しいですよ。お寺だけじゃ食っていけない」
 聞けばアルバイトは旅館での清掃仕事。集落から車で1時間かけて『通勤』。10畳ほどの広さの客室を一人で隅々まで掃除する。客室は14部屋あり、午前8時から午後3時までぶっ続けの作業だ。現在64歳の住職には過酷な立ち仕事だ。アルバイトを始めたのは3年半ほど前。以前は別の旅館で配膳のアルバイトをしていた。
 「お寺としての収入は、年間で3万円あればいいほうですね。何とか貯蓄を切り崩しながら生活できていたんですが、立ちゆかなくなってアルバイトを始めたんです。お金がないんです・・・

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僧侶残酷物語 年収3万円・副業に飛び回る住職・朽ち果てた寺…
216円(税込)

関東地方のある住職は、昼間はあまり寺にいない。生活のため清掃のアルバイトに出かけているからだ。ひそかに袈裟を着替え、他宗派のお経を勉強して法要をしたこともある。一般にはあまり知られていないが、経済的に厳しい僧侶が珍しくない。人口減や地方の過疎化、寺と檀家の関係が変わったことなどが背景にあるようだが、寺が一種の「既得権益」と化して社会の変化についていけてないのではないか、との指摘もある。(2017年6月30日号、5300字)

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