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朝日新聞出版

34代木村庄之助が語る近年の大相撲名勝負 曙も白鵬・朝青龍も

初出:2018年1月5日―12日号
WEB新書発売:2018年1月11日
週刊朝日

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 九州場所中に発覚した元横綱日馬富士による貴ノ岩への殴打事件に端を発する角界の内紛騒動。モヤモヤした日々を過ごす相撲ファンのみなさま、ここは数々の名勝負で観客を魅了してきた名力士たちの思い出に浸って楽しんでほしい。ご登場いただくのは34代木村庄之助として土俵を裁いた伊藤勝治さん。さあ、時間いっぱい、語っていただきましょう。 構成/相撲ライター・和田靜香

◇第1章 34代木村庄之助が語る なつかしの昭和〜平成大相撲名勝負
◇第2章 「貴ノ岩の番付下げないで」ナイツ・塙宣之


第1章 34代木村庄之助が語る なつかしの昭和〜平成大相撲名勝負

 行司が裁く取組って、はっきりと勝負ありの相撲はその瞬間にパッと軍配を上げるから、明日になったら忘れるんです。だから名勝負ってのは、他の行司が裁いているのを見てわかるもの。自分が土俵で裁くと、勝ち負け以外のことが印象深かったりしますね。行司の仕事の一つである場内放送も務めていましたから、そうして場内から見てきた取組の話をしましょうね。

■〈1位〉栃錦×若乃花 昭和35年大阪場所
 栃錦に衰えが見えた「栃若時代」の最後の頃です。千秋楽の一番、若乃花の引きつけが強く、栃錦がまわしを切りに行ったら、その瞬間に身体が浮いちゃって。寄り切られて栃錦の負け。世間では「全勝横綱同士の世紀の決戦」と言われていたようですが、私は栃錦が小学校(東京都江戸川区立下小岩小学校)の大先輩で可愛がってもらってたんで、悔しかった。中学1年で式守勝治として入門して4年目のことでした。
 当時「横綱にサインをお願いしてこいと兄弟子に言いつけられました」と栃錦関の所へ行くと、付け人に「ダメダメ、あっち行け」って門前払い。すると横綱が「おい、こっち来いよ」と、人懐っこい笑顔で快く応じてくれてねぇ。
 でも、この一番に負けて栃錦は翌場所に引退しちゃいました。一方の若乃花は昭和37年5月場所まで横綱を張りました。足腰が強靱で土俵に根っこが生えてる感じ。ぐぐっと押しても、足だけが動かない。
 振り返ると、栃若時代とは、日本の高度成長期の入り口の頃でしたよね。社会のエンジンがかかり出し、給料は右肩上がりで、世の中は景気が良くなる匂いがする。栃若で相撲人気も上がり、世の中も落ち着いてきた頃の一番です・・・

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