村井嘉浩・宮城県知事が、復興基本計画のなかで表明した「漁業特区」構想は、日本中で大きな話題を呼んだ。だが、そもそも震災の前から、日本の漁業は苦境に立たされていた。高齢化、構造問題、資源の枯渇──岐路に立つ日本の漁業の今後を追った。
◇日本から漁師がいなくなる! 高齢化と後継者不在が深刻化
◇ずさんな国の管理手法で減り続ける日本の水産資源
◇漁業権の再配分と資源管理でノリとハマグリ漁蘇らせた福岡
日本の漁師が減少し続けている。1949年のピーク時に109万人に達した漁業就業者は、2008年には5分の1の22万人まで激減した。その背景には、日本の漁業の構造問題がある。
「今80歳の漁労長が引退したら、うちの浜は漁業をやめる」
高齢化と後継者不在で漁業を廃業せざるをえない九州の漁業者は、無念そうにつぶやく。岩手県のある漁村では、浜の十数人の漁業者の平均年齢が60歳で、最年少は41歳で独身。誰にも後継ぎはいない。
2008年の漁業センサス(農林水産省が5年ごとに行っている漁業に関する調査)によれば、漁業就業者約22万人のうち、60歳以上がじつに全体の46%を占め、70歳以上も22%に達する。しかも、60歳以上の漁業者のうち、後継者がいるのはわずか18%のみとなっている。高齢化と後継者不在の状況は、日本の漁業が抱える共通の問題なのだ。今後もこの状況が続けば、やがて日本から漁師がいなくなる日が来る可能性もある。
問題はそれだけにとどまらない。ピーク時と比べて、日本の漁業生産高は半減、漁業就業者も5分の1に激減しているのだ。同じく漁船の建造許可は50分の1に、魚介類の自給率も半減している。まさに、日本の漁業は崩壊の危機にある。
そもそも、日本は世界に名だたる「漁業大国」である。年間漁獲高は543万トンで世界4位、排他的経済水域(漁業などを行うことが国際的に認められている水域)の広さでは世界6位。さらに、1人当たりの魚食量は年間57キログラムと世界一で、消費市場も大きい。
一方、漁業は産業としてのすそ野も大きい。漁師や船・漁具・餌メーカーなどの生産分野、捕った魚を保存したり加工したりする冷蔵・冷凍倉庫業者や加工メーカーなど加工・保管分野、仲買・仲卸、小売り、輸入業者など流通分野があり、波及効果も大きい。
産業としても市場としても世界的規模を誇る日本の漁業がなぜ、崩壊の危機に立たされているのか。
◎ノルウェーの4分の1 儲からない日本の漁業
漁業が衰退の一途をたどっている最大の原因は、ひと言でいえば儲からないからである。09年度の漁業者の平均年収は約250万円で、給与所得者の412万円を大きく下回っている。「収入が100万円程度しかない例も多い」(小松正之・政策研究大学院教授)。多くの漁業者は、行政からの補助金や陸でのアルバイトで、なんとか食いつないでいる状態なのだ。
ところが、同じ漁業者でも、ノルウェーでは平均年収が900万円と日本の3・6倍もある・・・
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村井嘉浩・宮城県知事が、復興基本計画のなかで表明した「漁業特区」構想は、日本中で大きな話題を呼んだ。だが、そもそも震災の前から、日本の漁業は苦境に立たされていた。世界的には儲かる産業で漁師は人気の職業と言われる中、なぜ日本の漁業は儲からないのか?[掲載]週刊ダイヤモンド(2011年10月8日号、7400字)
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