東日本大震災から1年、電力をめぐるさまざまな動きが、一気にピークを迎えた。各地で停止された原発がとうとう再稼働への道を歩み始め、東京電力の再生を足がかりとした政府による電力改革議論も急ピッチで進む。原発はまた動くのか、今夏の電力は足りるのか、またそこに落とし穴はないのか。今、電力をめぐる議論は綱渡りで進められている。
〈第1章〉共鳴する原発再稼働の足音
〈第2章〉電力改革と東電解体の綱渡り
果てしない料金値上げのリスク
『密室』で進められる改革論議
〈第3章〉見直し迫る地域と電力の関係
原発再稼働に向けた政府の動きがあわただしくなってきた。5月には原発全基停止を控え、経済産業省周辺には焦りが漂う。原発はいつ動くのか、今夏の電気は足りるのか──。その実態を探る。
明らかなターニングポイントだった。
2月23日、牧野聖修経済産業副大臣が文部科学省の政務官を伴って福井県庁に現れた。
再稼働の時期がいまだ見えない関西電力大飯原子力発電所3、4号機。地元の了承を要請する前の地ならしとして政治が重い腰を上げたのだった。これまでは官僚がパイプ役となってきたが、政治が決断しなければもはや前進しないことは明白だった。
対応した西川一誠知事はここで「(閣僚が)再稼働の必要性を自ら国民に明らかにすべき」と注文を付ける。牧野副大臣はその場で「私の段階ではわからない」と返すなど、議論は決してかみ合わなかったが、原発再稼働を目指す経産省には極めて強いメッセージとして伝わった。
即座に反応したのが枝野幸男経産相だ。翌日、「今の電力需給では稼働させていただく必要がある」と初めて再稼働の必要性を明言、細野豪志原発事故担当相も歩調を合わせるように3月に入って必要性を強調し始めた。
その後も矢継ぎ早に『攻勢』をかける。9日には四国電力伊方原発3号機についてストレステスト「妥当」の審査案が示され、11日には野田佳彦首相が「再稼働は私が先頭に立つ」と発言。13日には原子力安全委員会が大飯原発の安全性を評価し、政府は一気に再稼働への道を歩み始めた。
実は、再稼働へ向けた大きな手続き変更も行った。西川知事の要請をのんだのか従来の再稼働手続きも修正、地元了承の前に4閣僚が安全性を「確認」するという段階を取り入れたのだ。
次の図で再稼働プロセスを示しているので見てほしい。
まず、(1)電力各社が、原子炉が地震や津波に対してどれだけ余裕があるのかを評価するストレステスト(1次評価)を提出、(2)原子力安全・保安院がその妥当性を審査し、(3)原子力安全委員会が安全性評価の観点から確認を行う。
現在、大飯3、4号機が(3)をほぼ終えたところで、伊方3号機も(2)をほぼ終える段階にある。
焦点となっているのはこれ以降の手順。政府が新たに明確化したのが、(4)で首相と3閣僚が政治判断として、地元に安全性を「確約」するというもの。その後に(5)の地元の了承を得る。最後に、(6)の4閣僚による最終決定という手続きはあるものの、事実上、(4)が最終判断になることは間違いない。
ここで浮かび上がるのが、大飯3、4号機と伊方3号機の連続稼働のシナリオだ・・・
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東日本大震災から1年、各地で停止された原発がとうとう再稼働への道を歩み始め、東京電力の再生を足がかりとした政府による電力改革議論も急ピッチで進む。原発はまた動くのか、今夏の電力は足りるのか、またそこに落とし穴はないのか。今、電力をめぐる議論は綱渡りで進められている。[週刊]週刊ダイヤモンド(2012年3月24日号、12800字)
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