
原発事故後、避難区域には多くの動物たちが残された。いとしい「家族」であっても、「人命優先」の状況で、ペットの保護は後手にまわった。残された動物たちの保護にやっと進みだした時も、福島県が管理するシェルターは人手も物資も足りず、衛生環境も悪かった。手遅れで不十分だった対応に翻弄された動物たちの「いのちの記録」は、重い教訓を残している。[掲載]朝日新聞(2013年3月26日〜4月12日、17500字)
震災と原発事故で生徒たちは散りぢりになった。日常を失った学校は機能せず、生徒たちが自ら安否サイトを作り、連絡を取り合った。不条理な状況に投げ込まれた生徒たちの希望をどうつなぎ、学びへの意欲を消さないようにできるのか、教師たちも知恵を絞った。あの3・11から2年、震災を乗り越えて大きく育った生徒たちと教師の姿を追う。[掲載]朝日新聞(2013年3月6日〜3月25日、18700字)
福島県いわき市の漁師は困惑していた。海や魚の放射能汚染がどんな規模なのか全くわからなかったからだ。そんな折、南に位置する北茨城で魚から高い数値の放射性物質が検出された。さらに原発前の海からはすさまじい数値の魚が……。調査する舟も検出する機器もなかった地元水産試験場と舟を提供した大学とのハードな共同調査と、1968年の米軍爆撃機墜落によるグリーンランドの放射能汚染事故を重ねつつ、過酷事故がもたらした海に生きる人々の苦悩を追う。[掲載]朝日新聞(2013年2月13日〜3月5日、20100字)
陸上自衛隊中央即応集団は極秘任務を遂行する「影の部隊」の集合体で、福島原発事故では原発対処の主力だった。そのひとつ、中央即応連隊に東電社員救出の命が下った。重なる建屋爆発で現場の放射線量は膨大だった。3号機爆発に遭遇した中央特殊武器防護隊の隊員は負傷し、被曝した。爆発の危険を「東電は知っていたのではないか」。第1空挺団は飯舘村の住民救出に備えた。迫る最悪事を前に、放射能と対峙する「影の部隊」の壮絶な姿を多くの証言とともに再現する。[掲載]朝日新聞(2013年1月22日〜2月11日、20000字)
原発事故後、米国は日本政府の無策に怒っていた。在日同胞の被曝を危惧し、自衛隊の「英雄的犠牲が必要」と迫った。極秘公電を受け、菅総理は自衛隊に出動を命じ、ヘリ放水による原発冷却作戦が開始された。原発上空は、高さ30メートルで毎時247ミリシーベルトと高い放射線量だった。爆発も起きた。空中から、隊員は不安を抱きながら果敢に任務を追行するも、米側は不満だった。「日本は情報を隠している」。時間だけが浪費された3・11直後の日米の動きを詳述する。[掲載]朝日新聞(2013年1月3日〜1月17日、14500字)
震災から2度目の正月を前に、被災地の暮らしはまだ中ぶらりんのままだ。福島第一原発の近くに本社と工場があった餅専門店は、新工場を造るめどがまだ立っていない。使えなくなった田畑に太陽光パネルを設置する試みもまだ期待半分、不安半分だ。先の見定められない不安のなか、仮設住宅での暮らしが続く。[掲載]朝日新聞(2012年12月26日〜12月31日、6000字)
岩手県内陸部の遠野市は、3・11の大震災時は釜石など海岸部の被災地に食料や物資を届ける一大拠点だった。福島原発から200キロ以上も離れたこの地に高レベルの放射能が飛来するとは思いもしなかった。畜産農家に衝撃が走ったのは後日、2012年の2月以降のこと。総面積4880ヘクタールの大切な牧草地が使用禁止になった。農家の苦悩と、馬や牛の「放牧」の長い伝統をふまえつつ、5年がかりの汚染土の除染作業が続く現在進行形の「遠野物語」を紹介する。[掲載]朝日新聞(2012年12月11日〜12月25日、13400字)
福島県双葉町は、原発事故で警戒区域に指定された町の中で唯一、役場ごと県外に飛び出した。第一原発の爆発で「死の灰」を浴びた町長は3月12日、町民を被曝から守るためにいったん川俣町に避難させ、その後、埼玉県のスーパーアリーナ、同県加須市の廃校へと漂流する。他方、福島県内の避難所に残った町民も多く、「捨てられた」と嘆いた。帰るべき場所を失うとはどういうことか。想像を絶する過酷な現実を町長や被災者、移転先や国の当事者らの証言とともに検証する。[掲載]朝日新聞(2012年11月13日〜12月9日、24800字)
福島原発事故で避難しなければいけない被災者の中には、動きのとれない様々な障害者や要介護の高齢者がたくさんいた。人工透析が必要だが病院が閉鎖し、怒り、途方にくれた人もいた。とりわけ障害者は要援護者名簿があれば救えるはずだが、役所では個人情報の壁が立ちはだかった。南相馬市を舞台に、福祉施設の奮闘、ボランティアの献身、禁を破った役所担当者の苦悩と行動などを仔細に追いつつ、過酷事故後の盲点と課題を伝える。[掲載]朝日新聞(2012年10月23日〜11月11日、19000字)
青森県六ケ所村は、すでに「核のゴミ(使用済み核燃料)捨て場」か。巨額のカネを投入したゴミの再処理工場も止まったまま。真下に活断層もありそうだ。村は安全を国に売ったのではないか。甘い罠に気づくも、口を閉ざすしかない村民。原発が動けばゴミは増えるが、原発を止めるわけにはいかない国。地下のゴミ捨て場を求め、貧しい自治体をねらって怪しげな業者らが暗躍したが、受け入れ先はない。行き場のない「トイレのないマンション」政策の実態を、多くの証言とともに暴く。[掲載]朝日新聞(2012年9月28日〜10月22日、23100字)
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