■鉄嶺「踏査」記事の意味
■「鉄嶺のクロフネツツジ」=高英姫
■「先軍神話」で正統化進むが……
■金正恩の「戦友」ににじむ孤独
「鉄嶺」─。チョルリョンと発音する聞き慣れぬ地名が平壌ウオッチャーの間でクローズアップされている。軍事境界線にも近い江原道高山郡から南東へ越える峻険な峠で、古来、交通の要衝であった。この鉄嶺を平壌は2度にわたってプロパガンダに使った。
一度目は朝鮮戦争のときである。前線へ物資を運ぶ唯一の補給路となり、米軍は補給路を断つため、激しい爆撃を加えた。だが、勇敢にも朝鮮人民軍の輸送トラックは空爆の嵐をくぐり抜けて前線へ補給を続け、ついには戦争を勝利に導いた、というのである。
二度目は金日成死去後、未曽有の食糧危機で餓死者が多く出た。飢える兵士に、人民に今は「苦難の行軍」だとベルトを締めさせながら、新たに「先軍」を唱える金正日は最前線の軍部隊にしばしば足を運んだ。そのときに越えた峠がこの鉄嶺だった。むろん、朝鮮戦争時のエピソードを踏まえてもいた。「鉄嶺アリラン」なる歌までつくられた。
♪アリアリアリラン アラリヨ 鉄嶺よ聞いておくれ 将軍さまの 先軍の道 どれほど険しかったか……
さて、金正日が急死後初の彼の誕生日、光明星節を前にしたこの2月10日、労働新聞に目を引く記事があった。タイトルは「鉄嶺を忘れるな」。江原道にある中学の卒業生が、この鉄嶺を踏査したというのである。「踏査」は生やさしいものではない。赤旗を先頭に革命歌をうたいながら、昼夜分かたず隊列を組んでひたすら行進する。平壌など平地ですら気温は零下、山奥となれば、想像を絶する寒さである。10代半ばの子供たちがなぜ、そんな過酷な踏査をしなければならないのか?
震えるような筆づかいで記事は始まる。・・・
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2月10日、北朝鮮の労働新聞に掲載された記事「鉄嶺を忘れるな」。最近、平壌ウオッチャーの間でクローズアップされている「鉄嶺(チョルリョン)」と金正恩の実母、高英姫との隠されたつながりを、毎日新聞編集委員の鈴木琢磨氏が解明する。[掲載]e‐World(2012年3月7日、4400字)
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