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時事通信社

日中「2012年合意」を提唱=高原明生東京大学教授に聞く

初出:2012年10月24日
WEB新書発売:2012年11月5日
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◇日中「2012年合意」を提唱
◇円借原資に東アジア戦略基金を


日中「2012年合意」を提唱


■宣伝戦で勝った強硬派
■中国側の温度下げる努力を
■72年以後の状態維持を

 ─日本政府の尖閣の国有化についてどうお考えでしょうか。

 高原明生東京大学教授 中国の反応が結果的にはすごく激烈なものになったわけですけれども、そうなるかどうかは9月のある段階までは分からなかったのです。日本側が得ていたシグナルから判断すると、穏健派も有力でそれほど過剰反応はしてこないだろうという判断だったろうと思います。なおかつ、石原さん(慎太郎都知事)が買うよりはもちろん国が買った方が事態の安定的な維持管理のためにはいいに決まっています。そういう全体的な情勢判断の下に買ったということで、私としてはそれが間違いだったとは思っていません。中国側の反応はあまりにも過激です。

 ─外交当局が中国の反応を見誤った側面があるのでしょうか。

 高原氏 それは当然あるのですが、恐らく日本側が得ていた感触、当時中国が発していたシグナルからすると、そう判断してもやむを得なかったと私は比較的同情的に見ています。

 ─中国側が発していたシグナルとは。

 高原氏 中国国内のメディアでは、国が買う方が、石原都知事が買うよりはましであり、日本政府は事態を沈静化しようとしているのだという見解が有力な軍人や研究者らによって提示されていました。(中国側の)理解は示されていたわけです。恐らく外交当局の間のコミュニケーションでも、同じような理解があったはずです。

 ─中国は、直前のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に首脳同士が会ったときに駄目だと言ったのに、それにもかかわらず購入した日本が悪いと言っていますが。

 高原氏 それも変な話です。日本側ははっきりとあと数日で国が買うということは言ってあったのです。もちろん大事な2国間関係だからできれば配慮はしますけれども、できないことやそうしない方がよいこともあります。大体(APECでの)立ち話というのは、最後の瞬間に向こう(中国側)がやろうといってきた話なので、日本側からすれば、そもそもそういう立ち話会談が持たれたことがサプライズだったのです。もし向こうが本気でメンツがつぶされたと思っているなら、それは日本のせいではなくて中国側の判断ミスだということだと思います。

 ─反日デモがあれほど大きくなると予想されていましたか。

 高原氏 宣伝部門をはじめ、中国の党、政府が反日感情をあおりにあおったわけですが、あそこまで激烈な反応を中国側がしたのは予想外でした。先ほど申し上げたとおり、強硬派もいるのですが、穏健派もいるわけです。9月の10日すぎぐらいまでは穏健派の声も聞こえていましたので、形勢が逆転し、一部では放火や略奪までみられた暴力的なデモを容認するようになったことについて、私は驚きました。

◇宣伝戦で勝った強硬派

 ─背景は何でしょうか。

 高原氏 いろいろあると思います。基本的に対外強硬論と穏健論との間の綱引きがいつもある。これは底流で、もう一つは・・・

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