【お知らせ】WEB新書は閉店しました。

政治・国際
時事通信社

日中全面対決の蓋然性は=13年安倍内閣の正念場─改善への方策を提示

初出:2012年12月26日
WEB新書発売:2013年1月21日
e-World

このエントリーをはてなブックマークに追加

◇日中全面対決の蓋然性は=13年安倍内閣の正念場─改善への方策を提示
◇アサド政権崩壊で政治地図変化へ=2013年、波乱含みの中東情勢


日中全面対決の蓋然性は=13年安倍内閣の正念場─改善への方策を提示


■海洋権益拡大のメッセージ
■対日戦略にも硬軟入り交じる
■ICJ提訴、協力関係構築など検討を

 2012年11月、中国では習近平が共産党総書記に選出された。7人の政治局常務委員の決定もなされ、新指導部の顔触れが決定したが、その過程において熾烈(しれつ)な権力闘争が展開された。が、それと時間的には並行して、日中問題も悪化の一途をたどった。特に9月に入ってからは日本政府による「尖閣国有化」決定、その後の激しい「反日暴動」の噴出、尖閣近海の日本領海への中国警備船・艦船の領海侵犯が常態化、海洋局航空機の領空侵犯もあった。
 もちろん新指導部体制の形成と急激に悪化する日中関係を直接に結び付けて論ずることはやや危険性をはらんでいるが、私はあえて両者を結び付けて考察することで、新指導部の今後の方向性が見えてくると考えるようになった。

◇海洋権益拡大のメッセージ

 中国が尖閣諸島を自国領だと主張するようになってから、その主な背景として一般に以下の4点が考えられた。(1)尖閣諸島海域の豊富な海底資源の確保という経済的理由(2)国内の格差問題など民衆の体制不満のガス抜きあるいは指導部内の権力闘争の反映(3)中国の大国化に伴うナショナリズムの高まり(4)アジア太平洋の勢力圏拡大をめぐる軍事戦略的理由─の4つの要因である。
 今回の「反日暴動」は、(1)の要因は弱く、(2)もあったが、主に(3)と(4)の要因が強いと判断できる。さらに現時点で振り返ってみるならば、(5)尖閣を自らの領土を主張する台湾とも連携し、結果的に「中台統一」の機運と条件を高める効果も狙っていたと言えそうである。
 すなわち(3)の要素に関して、主に(2)とも絡んでさまざまな不満の爆発、権力闘争などにより中国国内の政治が不安定化する傾向にあり、国内を引き締め、共産党の圧倒的な威厳を示す必要があった。日本政府による「国有化」宣言は、この目的を実現する格好の材料となった。中国当局は「国有化」という表現自体を利用して、「日本政府側が領土を略奪した」「日本軍国主義が復活した」と叫び、国民の民族感情を激しくあおり立てた。

 これまで反日愛国教育を受けてきた国民、特に若者はこうした呼び掛けに呼応し、反日ナショナリズムの機運が一挙に高揚した。しかも日系企業−特に日本製として中国人に人気の高いトヨタ自動車、パナソニックの家電製品、イオンの総合スーパーであるジャスコ、平和堂など−を徹底的にたたき、破壊し、そこに働く中国人従業員らにも犠牲を強い、恐怖感を与えることによって、一般国民に日本に好感を持つことは危険だという感情を植え付けた。共産党大会を控え、中国の反日一色の愛国主義的雰囲気は共産党への不満を封じ込めるに絶大な効果を上げることとなった。
 同時に、(4)のアジア太平洋海域への軍事的な影響力の拡大という意図をめぐっては、日本の「国有化」は実力でもってこれに対し徹底的に抗議するという名目をとなり、中国の漁船、巡視船、艦船が「尖閣領海」に頻繁に乱れ込み、そのような状況を日常化することによって、「日本領海論」を実力で変更したような状況にある。
 もちろんこの問題は、やがて日中間の問題にとどまらず、近隣諸国、アジア太平洋地域におけるパワーバランスの変更にも関連した重大な問題となり、米国をも巻き込んだ長期的な係争問題となるであろう。おそらく以上の2点によって、中国当局の内政・外交上の当面の意図が見事に実現したと言えるのかもしれない。
 そして、それらの動向を概観するならば、習近平新政権は、内政的には時としてナショナリズムをあおりながら一党体制を堅持すること、さらに対外的にはたとえ国際協調重視の発言をしたとしても、実力を用いた海洋権益・勢力圏の拡大を図っていくという強いメッセージを内外に発したと見ることができる。その意図は、党大会「政治報告」(習近平が起草委員長)で「海洋強国の建設」を高らかにうたっていること、11月下旬の空母「遼寧」での戦闘機発着艦訓練の公開などにも現れている。

◇対日戦略にも硬軟入り交じる

 台頭する中国の対外戦略を見てみると・・・

このページのトップに戻る