政治・国際
時事通信社

青山弘之東京外大教授に聞く 紛争下の化学兵器査察は困難─シリア

初出:e-World2013年9月26日
WEB新書発売:2013年10月15日
e-World

このエントリーをはてなブックマークに追加

◇紛争下の化学兵器査察は困難─シリア
◇反体制派の攻撃にイスラム過激派が深く関与
◇核開発疑惑国への影響には否定的


紛争下の化学兵器査察は困難─シリア


■アサド大統領任期中の決着図る
■国内統治のためのツール

 青山弘之東京外国語大学総合国際学研究院教授はシリアの化学兵器廃棄問題などに関して、時事通信社のインタビューに応じた。この中で、アサド大統領はこの問題を政権維持のために利用しているとの見方を示すとともに、内戦が続くシリアでの査察・廃棄は困難との見方を示した。また反体制派の戦闘にはイスラム原理主義の過激派組織が深く関わっていると指摘した。
 インタビューの内容は次の通り。(聞き手=解説委員兼Janet編集長 市川文隆/インタビュー写真=写真部 久保修平、インタビューは9月17日)

 ─シリアの化学兵器について国際管理する枠組みができました。どのように評価されていますか。

 青山弘之東京外国語大学教授 まず、誰が化学兵器を使ったのかは別にして、最初はやはりアメリカが軍事介入することの本気度というか、一時は攻撃するかと思われていたのですが、実際に具体的にやるかどうか考えると、かなり怪しかったと言えるかと思います。

 にもかかわらず「攻撃する」と言って、あれだけ国際社会で騒がれてしまったので、軟着陸したところはアメリカにとってあまり優位ではない。逆にロシアにとっては極めて満足のいくものがあり、アサド政権にとっても、まあまあいいかなという感じかと思います。総じて言うと今回のアメリカの軍事的な脅迫というものに伴う行動というのは、外交的には成否で言うと失敗の部類かな、という印象はあります。逆に言うと、アサドにとっては外交的、政治的にはこの点では勝利だったという感じかと思います。

◇アサド大統領任期中の決着図る


 ─シリアが具体的に化学兵器を申告して、査察を受け入れて、最終的には廃棄というプログラムだと思いますけれども、実際に内戦が終わる見通しはなく、いろいろ問題点が指摘されています。その問題点は。

 青山氏 まず、今回の米ロの合意のタイムスケジュールというのに注目していた方がいいかと思います。2014年の半ばまでに全廃です。この14年の半ばまでというのは、アサド大統領の任期が切れるのにタイミングを合わせているので、時期的にはここまでの政局をこれで運営するということだと思います。
 要は、西側はアサド大統領が平和的に退陣するために圧力をかけるタイムスケジュールを提示したとみた方がよくて、逆に言うと、化学兵器を本気で撤廃するとかいうところは、かなり微妙なところという感じはします。
 そもそも化学兵器の申告に関して、申告内容が実証できないということ。仮に実証するにしても、化学兵器禁止機関や国連の査察団の調査は、今のシリアの紛争の状態だと検証は難しいということです。化学兵器を廃棄するというときの問題点というのは、紛争が続いている中でどれだけ現実味のある申告や査察ができるのかというところだと思います。それには当然の反体制派も(化学兵器を)持っている疑惑もあるので、その辺にどう対処するかというところもあります。

 ─その辺はかなり曖昧です。

 青山氏 そうです。恐らくこの化学兵器を使う、使わないということが政局として今後も利用できるというふうに判断した政治主体が、シリアの国内のフィールドでまだいるのであれば同じような事件は再発するだろうし、そのことはどういうことかというと、査察を行う上での安全性が確保できないということになってしまいます。
 そういう意味では・・・

この記事の続きは、WEB新書でお読みいただけます。

青山弘之東京外大教授に聞く 紛争下の化学兵器査察は困難─シリア

終わりがないかと思われたシリアの混迷は、皮肉なことに化学兵器の住民への使用という蛮行が一種の契機となり、出口への一歩を踏み出したかに見える。とはいえ政府軍と反政府軍に加え反政府軍同士の戦いが続くなど、問題は山積している。影響力の退潮著しい米国、化学兵器廃棄への筋道をつけたロシア─大国の思惑が絡む「迷宮」シリアに何が起きているのか、青山弘之東京外語大教授に聞いた。[掲載]e‐World(2013年9月26日、15000字)

スマートフォン、タブレットでも読めます。

Facebookでのコメント

このページのトップに戻る