銀行や証券会社が勧めた為替デリバティブ取引が中小企業を追い詰めている。その商品性が難解であるため、いまだ全容は明らかになっていない。果たして、責任は誰にあるのか。
金融機関が中小企業に取引を勧めたのは、為替デリバティブの一種である「通貨オプション」取引。通貨オプションは、あらかじめ決めた価格(行使価格)で外貨を売買する権利のことで、この権利を売買する。
中小企業は、「ドルを買う権利」(ドルコールオプション)と「ドルを売る権利」(ドルプットオプション)の売買を金融機関との間で行う。図は1ドル=100円の行使価格で「ドルを買う権利」と「ドルを売る権利」の売買契約を結んだケースだが、1ドル=80円の円高になると、企業は「ドルを売る権利」によって、不利なレートでドルを調達しなければならず、損失が発生する。
ただし、金融機関は中小企業と行ったデリバティブ取引について反対取引を行うなどして、リスクをヘッジしている。金融機関が同取引から得られる利益は基本的に手数料のみとされる。
メガバンクなど銀行が中小企業に勧めた為替デリバティブ(金融派生商品)取引。金融庁によると、2004年から10年9月にかけて6万3700件の契約が結ばれた。特に円安・ドル高が進んでいた04年からの4年間は、新規契約が年1万件を超えた。
売り文句は「リスクヘッジ」。円安がさらに進んでも、商品の輸入などに使う外貨(ドル)が安く購入できるとしていた。ところがその後の円高で同取引は多額の損失を生み出す結果となった。まずは当事者の証言から、何が起こったのかを振り返ってみたい。
大阪・難波から電車で約30分の郊外。駅前商店街を抜けた場所にその店はあった。店頭には500〜600円の婦人用ブラウスなどが並ぶ。近づくと、この店の社長が自ら客の呼び込みをやっていた。
衣料品店を経営しているこの社長が、為替デリバティブを勧められたのは07年3月のことだった。みずほ銀行から融資担当者など3人がやってきた。社長はこのとき勧誘を断っている。店で販売している商品の8割は中国からの輸入品だが、実際の仕入れは商社を経由しているため、ドルは必要なかったからだ。
それから1週間後。今度は三菱東京UFJ銀行から担当者がやってきた。要件は同じように為替デリバティブの勧誘。社長はこれも断った。その数日後、みずほの担当者らが再び訪ねてくる。社長は根負けして承諾してしまう。「銀行だから受けるじゃないですか。(銀行融資の)利率や枠にも影響があるかなと思うし……」。
当時、為替レートは1ドル=117円前後だった。これに対して、社長がみずほと契約したのは「5年にわたって3カ月に1回、12万ドルを決済する。行使価格は1ドル=105・79円」という内容だった。為替レートがそのまま推移すれば、1ドル当たり11円も得する計算になるし、そのころは一層の円安も懸念されていたので、この契約で円安メリットを享受できると思った。
もちろん、ずっと利益を生むものではないことも理解していた。「円安が続いている間の1〜2年で得られる利益を貯めておいて、円高で『負け始めた』ときには、それで払えばいい」と考えたのだ。
だが、それがとんでもない結果を招くことになる。・・・
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銀行や証券会社が勧めた為替デリバティブ取引が中小企業を追い詰めている。その商品性が難解であるため、いまだ全容は明らかになっていない。果たして、責任は誰にあるのか。[掲載]週刊エコノミスト(2011年7月5日号、4400字)
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