戦後タブー視されてきた東大と原子力の関係を精査する時が来たようだ。東大がいただく「原子力ムラ」を公然と批判する動きが内部で伸長しているのだ。「秋入学」論議以上に燃え上がり、対立は深まるばかりである。そのキーワードは「東大話法」――。
「東大で原子力工学を研究する学者の欺瞞が凝縮されている。事故を矮小化し、反省もせず、国民を欺く姿は悪質としか言いようがないのです」
東大関係者がこう嘆息するのは、日本原子力学会のホームページで会長の田中知・東大大学院工学系研究科教授が福島第1原発爆発後に綴った一文だ。
〈今一度、我々は学会設立の原点である行動指針、倫理規程に立ち返り、己を省みることが必要であります。すなわち、学会員ひとりひとりが、事実を尊重しつつ、公平・公正な態度で自らの判断を下すという高い倫理観を持ち、(中略)社会に対して信頼できる情報を発信する等の活動を真摯に行うことが出来るよう会長として最大限の努力を致す所存であります〉
田中教授は核燃料サイクル、放射性廃棄物などが専門。2010年6月に日本原子力学会会長に就任、産官学が連携する「原子力ムラ」の中枢に座った。原発事故を受けてかくも高邁かつ誠実な精神を謳い上げた田中会長を、「まったく信用できない」と冒頭の東大関係者は警戒するのだ。それは、田中教授が東大環境安全本部放射線管理部長として責任者を務める「環境放射線対策プロジェクト」が、多数の東大教員から批判される「情報発信」をしたからだ。
「情報発信」をめぐるトラブルの経緯はこうだ。同プロジェクトは原発事故後、3カ所の東大キャンパスの放射線量を調査し、公表した。その結果、昨年4月の柏(千葉県柏市)キャンパスは0・37〜0・50マイクロシーベルトで、0・08マイクロシーベルト前後で推移した同時期の東京・本郷キャンパスと比べ格段に高かった。これを受け、プロジェクトのメーンのホームページに付随した「環境放射線情報に関するQ&A」コーナーで柏キャンパスの線量が高い理由や影響評価が次のように説明されたのだ。
〈測定値近傍にある天然石や地質などの影響で、平時でも放射線量率が若干高めになっているところがあります〉
〈結論としては少々高めの線量率であることは事実ですが、人体に影響を与えるレベルではなく、健康になんら問題はないと考えています〉
柏市といえば、原発事故による放射能汚染の「ホットスポット」として高い線量が測定されてきたことは、文部科学省の航空機モニタリング調査などから明らかだ。また、低線量被曝に関する世界的に標準的な仮説は、放射線による発がんリスクには・・・
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戦後タブー視されてきた東大と原子力の関係を精査する時が来たようだ。東大がいただく「原子力ムラ」を公然と批判する動きが内部で伸長しているのだ。「秋入学」論議以上に燃え上がり、対立は深まるばかりである。そのキーワードは「東大話法」――。 [掲載]サンデー毎日 (2012年3月4日号、4800字)
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