「プルトニウムは飲んでも大丈夫」。放射能への不安を鎮めるどころか猛反発を招いたこのセリフで、一躍「時の人」となった東大大学院の大橋弘忠教授(59)。マスコミを拒む一方、ひそかに「逆ギレ」反論をブチまけていた。
2005年12月25日、佐賀県唐津市であった九州電力玄海原発へのプルサーマル導入の安全性を問う公開討論会。壇上の大橋氏は、余裕の笑みとも受け取れる表情を浮かべ、持論を滔々と展開していた。
「事故の時にどうなるかは、想定したシナリオにすべて依存する。(原子炉の)格納容器が壊れる確率を計算するのは、大隕石が落ちてきた時にどうするかという起こりもしない確率を調べるのと一緒。専門家になればなるほど、格納容器が壊れるなんて思えない」
「プルトニウムは実際には何にも怖いことはない。水に溶けないので飲んでも体内で吸収されず、体外に排出されるだけだ」
ところが福島第1原発事故によって、事故が「想定したシナリオに依存」するどころか、制御不能に陥ることがはっきりした。プルサーマルに否定的な意見を述べる京大原子炉実験所の小出裕章助教(62)らに対して、「上から目線」で安全性を強調する大橋教授の様子は今も動画投稿サイトで視聴することができる。
プルサーマルとは、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた混合燃料(MOX燃料)を使う発電方式。安全性や経済性に疑念が絶えない方式だ。この公開討論会に関しては、玄海原発再稼働をめぐる「やらせメール事件」を検証した第三者委員会が、九電による大量動員や「仕込み質問」の事実を明らかにしている。
「都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする」「どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す」「『誤解を恐れずに言えば』と言って、嘘をつく」――など、20カ条の「東大話法」(本誌3月4日号)を解析、原発危機との関係を考察した東大東洋文化研究所の安冨歩教授(48)は言う。
「国内初となる玄海原発へのプルサーマル導入に、大橋氏の『原発推進トーク』がひと役買ったと言われても仕方がない。その延長線上で10年9月には福島第1原発の3号機にMOX燃料が投入され、半年後にその3号機が水素爆発で大量の放射性物質をばらまいた」
大橋教授は、東大原子力工学科から同大学院博士課程を経て東京電力に入社。86年1月に東大助教授に転身。現在は同大学院工学系研究科システム創成学の教授である。その経歴から一部では・・・
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「プルトニウムは飲んでも大丈夫」。放射能への不安を鎮めるどころか猛反発を招いたこのセリフで、一躍“時の人”となった東大大学院の大橋弘忠教授(59)。マスコミを拒む一方、ひそかに“逆ギレ”反論をブチまけていた。[掲載]サンデー毎日(2012年4月1日号、2700字)
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