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特集 (1)演じ手も作り手も半端ないエネルギーを消耗する

2016年8月31日更新
写真:河原雅彦=岩村美佳撮影 河原雅彦=岩村美佳撮影

――本作は韓国創作ミュージカルの日本版初演となります。橋本さんは「シャーロック ホームズ」シリーズに続いての韓国ミュージカルになりますね。

橋本:そうなんですよ。韓国ミュージカルの楽曲って素晴らしい分、とても難しいんですよね。「シャーロック ホームズ」での謎解きの歌なんて、曲自体が謎めいていて(笑)。

――確かに難解な楽曲でしたが、お芝居に引き込まれる素晴らしい歌唱で、見ごたえ、聞きごたえたっぷりな作品でした。

橋本:そう思っていただけたならうれしいですね。あの面白さが出るのは芝居と音楽が密着しているからなんですよ。役者として歌っていてもミュージカルのための音楽・作曲をよく勉強した方が作っているんだなと感じます。楽曲の中で、そのシーンごとのキャラクターの心情がしっかり描かれているんです。ミュージカルの楽曲って結局はセリフでしゃべる言葉を歌にすることでドラマを増幅させるもの。芝居と歌がかけ離れていたら、やるほうも見る方も違和感がありますよね。

――本作でも、やはり芝居と歌の関係は密ですか。

橋本:はい。だから、今回すごくうれしかったのはリーダー、あ、河原くんのことね。稽古場でのリーダーの第一声が「これはストレートプレーなんだ。そういう意識をもってやってほしい」というものだったこと。それを聞いて同じスタートラインに立ち、同じ方向を目指していることを確信しました。「よっしゃ! 俺もそこを目指していたんだ!」って。

――河原さんは本作を韓国でご覧になっているそうですが、どのような印象を受けましたか。

河原:当たり前ですが韓国で見たときは言葉がわからないので、まず入ってきたのは、ビジュアルと楽曲の良さ。舞台で映像、プロジェクションマッピングを使うことは今ではさして珍しいことではありませんが、今回ほど舞台美術の一部として成立している作品はなかなかありません。そして、なんと言ってもあのゴッホの物語ですからね。ゴッホといえば“絵”。その意味でも映像が作り出す世界観と作品自体がすごくマッチしている。そんな細部に至るまで非常によく練られているんです。

――そして日本版初演の演出を手掛けられることになって。

河原:実は、最初、自分の仕事が分からなかったんです(笑)。

橋本:そうそう、確かにそう言っていたよね。

河原:あそこまでよく考えられたプロジェクションマッピングを使うということは、俳優の動きも細かなところまで制約があり、ほぼ“そう動く”しかなくて。その上で自分は何をするんだろうって。夏場で暑いし、楽でいいな!くらいに思っていたんです(笑)。

橋本:ウォーミングアップぐらいだって言ってなかった?

河原:そう、ウォーミングアップでお金をもらえると思っていたら、まぁ大違いで(笑)。

――どのあたりから「違うな」とお気づきに。

河原:上演台本も書かせていただいたのですが、まず翻訳したものを見て、つまり言葉がわかったときですね。日本版が作れると感じ、台本にいろいろと肉付けしていきました。ひと言で言ってしまうと、ヴィンセントとテオ役の俳優が作る世界観。演者が違えば自然とアプローチも変わると思いますが、この素晴らしい楽曲を役としてセリフのように歌うことで韓国版とは違う手触りの作品になると思ったんです。

 あと、ミュージカルというエンターテインメントでありながらも、ゴッホを扱うとなると、演じ手も作り手もやっぱり半端ないエネルギーを消耗するものなんですよ。

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