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特集 (4)「無意識の罪」、自分もどこかで絶対にやっている

2016年9月5日更新
写真:青木隆敏=岩村美佳撮影 青木隆敏=岩村美佳撮影

――先日、先に倉田さんにお話を伺ったときに、この話は最終的に「無意識の罪」に集約されるとお話しされていました。これは、登場人物全員が、ある意味加害者であるということですか?

倉田:そうです。究極をいってしまえば、被害者であるアビゲイルも「殺させた」のかもしれない。そこには「無意識の罪」があるんです。逃げてしまう姉のエンマは、逃げざるを得ない彼女の正義もあるけれど、ひとりになりたくないとSOSを出したリッヅィーを置いていったのはやはり罪です。自分も、きっとどこかで絶対にやっているに違いないなと思いますね。最後にリッヅィーが客席に向かっていう「あなたよ」が、作家の言わんとしたこと。すごくシンパシーを感じました。

石飛:みんな思いますよね、最初に読んだ時に。自分もやっているって。

――稽古に入ってみて、手ごたえを感じますか?

倉田:言葉が大変ですよね。翻訳の吉原豊司さんがデリケートな翻訳をしてくださっているんです。だから、自分流に言葉を替えないで台本通りにやってねといつもいっています。吉原さんのメッセージが込められているので、一字一句ちゃんといってねと。

――先ほどリッヅィー役は試行錯誤中とおっしゃっていましたが、稽古に入っていかがですか?

青木:物語の中に自分自身も引きずり込まれていく瞬間もあるし、でも劇中劇は俯瞰(ふかん)で見ているので、ちょっとまだ僕の浅い人生では追いつかないところがあるなと(笑)。ふだんは役に対して難しいとはあまり思わないんです。感情を掘り下げていけば、役にたどり着くので。でも、この作品は、「女優」に自分を演じさせる物語構造が難しいなと。リッヅィー役ではなく、物語の設定の中でどう存在していけばいいのか難しいです。場面場面で、ポジションが変わるので。

――現代と、過去(劇中劇)を行ったり来たりしますものね。

青木:その辺がちょっと難しいなと。「LILIES」でビロドー司教を演じて、劇中劇を受ける立場も経験しているんですが、それともちょっと違う。

倉田:もっと渦中の人。

青木:僕が34歳のリッヅィー・ボーデンを演じて何が起きたのかという物語だったら、その事件の核心に迫るまで走っていけたと思うんですよね。それと、さっき倉田さんが人それぞれ正義があるといっていましたけど、昔は正義という言葉がすごく好きだったんですけど、今はすごく嫌いで。正義なら戦争で人を殺してもいいみたいな、今現代が混沌(こんとん)としているせいか、その正義という言葉でいろんなことを片づけちゃっているところがある。

 この物語もそうじゃないですか。登場人物みんなに正義がある。もちろん、自分自身にも正義があるので、僕がリッヅィーを演じるにあたっても、リッヅィーに対して葛藤する部分があります。おい、リッヅィーよ、正義をかざせば何をやってもいいと思っているのか、みたいな。たぶん自分を肯定してるわけじゃないんです、リッヅィーって。でも、100%否定しているわけでもないと思うんですよね。

 簡単じゃないんですよ。簡単じゃないから演劇アプローチも簡単にはいかないんです。でも、優二とも話したんですけど、あれこれ考えだすと何にもできなくなるよねって。だから、シンプルにやったほうがいいんじゃないかって。

久保:でも、自分でシンプルにやろうとするとできなくて。シンプルがわからなくなっちゃって(笑)。

倉田:今、がんばって先に進むことをやってるじゃないですか。先に進むと発見が絶対にある。だから、がんばって先に進んだほうが絶対にいいんです。点で考えていると、わけがわからなくなる。

――なんか人生のようですね、点で考えちゃダメって。

倉田:ああ、そうですね、ホントだ。今、ゾッとした(笑)。

青木:何年後かに、あの時は、あ、こういうことだったんだってわかることありますよね。

石飛:そうですよ。だから、役者をやっていると人生に対するダメ出しをされるから、本当に落ち込むんです。もちろん倉田さんだけじゃなく、演出家は響くことをたくさんいっていて、自分の生きざまを追究したくなっちゃうんですよね、芝居を作っていると。自分はまだまだ何もわかってないと思って、もっといろんなこと知らないとこの役をできないなと。そういう意味では、いっぱい知ることができるといいなと思います。自分もそうだったし。僕は若い時に、いつも年上の役ばっかりやってたんですよ。20代なのに、40代とか50代とか。

――その頃は劇団員の方が全員若かったからですよね。

石飛:そうなんですよ。だから、実年齢の役はほぼやっていないです(笑)。

倉田:かと思うと、年取ってから若い役をやらされたり。

――「トーマの心臓」のレドヴィ、素晴らしかったです。

石飛:いや、いや、いや(笑)。ありがとうございます。

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