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特集 (2)その役に近づこうと、どれだけ努力できるかが大事

2016年9月23日更新
写真:藤岡正明=岩田えり撮影 藤岡正明=岩田えり撮影

――相当なエネルギーを使うんでしょうね。

 歴史の事実に我々が向き合って、本当に命をかけて戦った人がいて、命を落とした人も、まだまだ今も苦しんでいる人がいます。その人たちに対して、その題材を扱う作品を上演するということは、そこから目を背けないことがせめて我々にできる礼儀なんですよね。それを安易に考えて「エンターテインメントだから」「これはフィクションだから」と言っていたら恥ずかしいことだと思うんです。

――藤岡さんのトゥイ役がめちゃくちゃ楽しみになりました! 鮮明に記憶に残りそうな気がします。というのは、一度拝見しましたが、そこまでトゥイ役が記憶に残っていないんです。

 そんなに出番があるわけでもないですし、怖い印象しかなかったりしますよね。でも、そのトゥイ役の印象を変えたいわけではなく、トゥイ役を鮮明に残したいわけでもありません。自分をよく見せようとも思っていませんし、怖い、悪者だと思われることへの抵抗は何もないんです。ただただ、単純なことで、この作品をやるということは、大きい役だろうが小さい役だろうが、その役としてどれくらいそこに向き合っていけるか、近づこうとどれだけ努力できるかということの方が大事です。キャストも、演出家を含めても、誰ひとりとしてベトナム戦争に従軍した人なんていません。僕らができることは、精いっぱいそこに近づこうと努力することですよね。この作品をやる以上は、歯車のひとつとして取り組んだときに、生半可に挑みたくないんです。

――自分が納得するところに持っていけそうですか?

 わかりませんが、持っていかなければいけないですね。少なくとも、「頑張ります」ではなくて、「やらなければいけない使命のある作品」だと思っています。日本が終戦したのは71年前、僕の祖父は戦争に行っていた人で、おかげさまで元気にしていますが、そういう方たちがこれからどんどん亡くなっていきます。それはベトナム戦争においても同じで、10年間も戦って、終わってから41年経っています。つまりベトナム戦争の記憶がある人は、50代以上だということ。これから戦争を伝えていく人はいなくなっていきます。

 そのなかでどうやって伝えていくのかを考えると、少なくとも伝える側の役者に、かなりの覚悟が必要だと思っています。実際に、女性キャストのなかには稽古中に息が苦しくなってしまった人もいます。その覚悟を持って取り組んでいるので、ぜひお客さまにもそういう覚悟で見にきていただきたいです。ただ単純に、エンターテインメントとして楽しんでもらうだけの作品ではなく、こういう事実があったということを伝えていかなければいけないことも含めて見にきていただきたいです。

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